榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

年老いた友人とぼくとの、美しく不思議な時計を巡る切ない物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3902)】

【読書の森 2025年11月28日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3902)

オオモミジ(写真1、2)、ノムラモミジ(写真3)、イロハモミジ(写真4~6、写真4は撮影助手<女房>がスマホで撮影)、ドウダンツツジ(写真7)が紅葉しています。

閑話休題、『運命の時計』(ウォルター・デ・ラ・メア著、金原瑞人訳、ヨシタケシンスケ画、理論社・世界ショートセレクション)に収められている『運命の時計』は、不思議な力を持っている時計の話。

ヴァイセホイザというドイツの小さな町。風変わりな老人アドルフ・ゲッセンが店の暗がりの中で、朝から晩までランプの下に座って、大小の時計の修理をしている小さな骨董店。ぼくは、ドイツ語はほとんどしゃべれないイギリスの18歳の若者ハリー。「ふたりには秘密の共通点があって、そのおかげでいろんな不便がじゃまにならなかったのだろう。この老人は恋をして、恋に破れた。そして、ぼくも同じように――望みのない、悲しい、若い情熱をポーリン・デュッセナインに捧げたのだった」。

かすかな音がしているのに、文字盤には数字が書かれておらず細い針が一本しかない不思議な時計を「持っていくがいい。そして、みた夢を話してくれないか」とゲッセン。チョッキの内ポケットに時計を納めたハリーは、これまでは臆病でうじうじしていたが、時計のせいで、思い切って6歳年上のポーリンに愛を告白。その結果は・・・。

年老いた友人とぼくとの、美しく不思議な時計を巡る切ない物語。