榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

統合失調症とは、どんな病気かが分かる一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3911)】

【読書の森 2025年12月7日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3911)

タヒバリ(写真1)、キセキレイ(写真2~4)、ハクセキレイ(写真5)をカメラに収めました。イロハモミジ(写真6)が紅葉しています。マテバシイ(写真7~9)の実が落下しています。因みに、本日の歩数は14,718でした。

閑話休題、長らく医薬品業界で働いてきた私にとって、精神分裂病、現在では統合失調症と呼ばれる疾患は、病理がもう一つ分かり難い印象がありました。今回手にした『本人・家族に優しい統合失調症のお話(第2版)』(功刀浩著、翔泳社)のおかげで、統合失調症について理解を深めることができました。病理だけでなく、診断、治療、食事・運動、家族のサポートについても分かり易く解説されています。

●統合失調症は、脳の働きのバランスが崩れて怒る病気。原因となるはっきりとした遺伝子異常は特定されていない。遺伝的要因や環境的要因が複雑に絡まり合って発症すると考えられている。病気発症のカギを握るのがストレスに対する脆弱性(もろさ)である。

●統合失調症は、その脳内の異常が全て解明されたわけではないが、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れて情報処理がうまくいかなくなることや、脳の各領域を繋げる神経ネットワークの一部が弱くなり、スムーズに働かなくなっていると考えられている。そのために考えや気持ちがまとまりづらくなってしまうのだ。

●統合失調症の経過には個人差がある。大きく前駆期、急性期、消耗器、回復期、寛解期(症状が落ち着いてくる時期)に分けられる。一般には、急性期には幻聴や妄想といった陽性症状が、消耗期には、表情が乏しく、引きこもり気味になるなどの陰性症状が、消耗期から回復期には、記憶力や問題解決能力が低下するといった認知機能障害が目立つ。

●陽性症状を引き起こすのは過剰な神経伝達物質ドーパミン。ドーパミンが過剰になると幻覚や妄想を引き起こすことから、統合失調症の原因の一つにドーパミンの過剰が考えられている(ドーパミン仮説)。現在の統合失調症の治療薬(抗精神病薬)は、このドーパミンの働きをブロックする作用を持っている。しかし、ドーパミン仮説は陽性症状に当てはまっても、陰性症状に対しては説明がつかない。そのため別の神経伝達物質の関与が注目されている。1つはグルタミン酸仮説で、健常者が神経伝達物質のグルタミン酸の働きを遮断するような薬を吞み続けると、統合失調症のような陽性症状だけでなく陰性症状も引き起こすことから、グルタミン酸の伝達の異常が統合失調症を引き起こすのではないかという考えだ。もう1つは、GABA(γーアミノ酢酸)仮説で、抑制性(神経細胞の興奮を抑制させる働き)の伝達物質であるGABAの働きが悪くなると、脳全体をコントロールする前頭葉の働きに異常をきたしてしまうという考えだ。グルタミン酸やGABAの作用に異常が起こると認知機能障害をきたすほか、ドーパミンの作用にも影響を及ぼして、幻覚、妄想などの症状が出ると考えられている。

●統合失調症は、再発しやすい病気である。再発のきっかけになりやすい2つの要素は、薬物療法の中断とストレスである。