法学部出身の数学者にして、人工知能学者のエッセイ集だが、実に面白い!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3963)】
エナガ(写真1)、シジュウカラ(写真2)、スズメ(写真3)、シメ(写真4)、ツグミ(写真5)、キジバト(写真6)をカメラに収めました。今日は、長年中断していた太極拳の稽古再開の第1日目でした。2時間半の稽古はハードだが、自分で定めたレヴェルに達するまで頑張ります!







閑話休題、エッセイ集『夏蜜柑とソクラテス』(新井紀子著、草思社)で、とりわけ印象に残ったのは、●「解ける」より「わかる」が尊い、●定理を釣る、●哲学を捨てる――の3つです。
●「解ける」より「わかる」
あの頃、私は、算数の苦手な女の子だった。・・・そういう私が、なぜ大学に入ったら数学が好きになり、法律の道を捨てて数学の道を選んだのか、自分でも不思議だ。ただ、大学に入ると、とつぜん「解ける」よりも「わかる」ことに価値がシフトしたことを強く感じたことは覚えている。高校までの数学の授業では「わかりました」よりも「解けました」「答えが合っていました」のほうが大事だった。・・・ところが、大学に入ってみると、数学を学ぶ時間の大部分は、数学の教科書を読んで「わかる」ことに費やされるようになった。「解ける」ことや「計算する」ことよりも、「わかる」のほうが重んじられるようになったのだ。
●定理を釣る
その人は高名な数学者だった。・・・若い頃に、大きな定理を狙ったことがある。留学先のことだったようだ。根をつめて考え抜いたそのとき、こうすれば解けるという道筋が見えてきた。それで、喜び勇んでその筋の大家のところに行き、「こうすれば解けると思うんです」とそのアイデアを披露したそうだ。すると、相手はやや顔を曇らせて「どうだろう。それではうまくいかないような気がする」と言った。「そうしたら、見えていたはずの道筋が見えなくなったんだよ」。数年後、彼が思いついたのと同じ道筋で、よその国の人がその定理を仕留めた。・・・「だからね、一番大切なことは、誰にも言ったらいけないんだよ」と諭すようにその人は私に言った。
●哲学を捨てる
ChatGPTの登場により、大規模言語モデル(LLM)に基づく生成系AI の話題がメディアを席巻している。・・・歴史上初めて、人類以外のものが言語を「操る」ようになった(少なくともそう見える)と、認めざるを得ない。一方で、ChatGPTの出力には誤りが多い。いや、「言語を操る機械」なのだから、「ウソが多い」と言うべきか。・・・「ChatGPTは『正しい答え』を出すためではなく、もっともらしい文章を生成するために開発されたのです。ChatGPTに正しさを求めるのは筋違いです」と研究者がいくら説明しても、一般の方からの理解は得られそうにない。・・・この後、AIが「正しさ」を目指すのは容易なことでは、ない。・・・ChatGPTは、あなたが彼のウソを見破ることができる程度に熟知している分野の業務効率化には大きく寄与するだろう。どうでもよい仕事をChatGPTに下請けさせ、真にクリエイティブな部分だけをすればよい。・・・AI技術は「正しさとは何か」という哲学的な問いを捨て去ることによって発展した。
法学部出身の数学者にして、人工知能学者のエッセイ集だが、実に面白い! その独特の風味が癖になりそうだ。この著者には、どんどんエッセイも書いてもらいたい――私の心からのお願いです。
