榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

資本主義の最大の批判者カール・マルクスの『資本論』第1巻では「資本主義」という言葉が使われていない・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3974)】

【読書の森 2026年1月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3974)

誕生日ということで、多くの方から励ましメッセージを頂戴し、「頭の中に森のような図書館をつくる」という夢の実現に向けて、思いを新たにしました。

閑話休題、『歴史の語り手たち――過去が人類の物語になるまで(下)』(リチャード・コーエン著、山田文訳、東京堂出版)には、興味深いことが書かれています。

●完成した『資本論』第1巻で「資本主義」という言葉が使われていないのは注目に値する。マルクスが資本主義の最大の批判者だったことを考えると、かなり大きな欠落である。

●1944年に40万人近くのユダヤ人がナチによって主にアウシュヴィッツへ強制的に送られたのは、ハンガリー当局の協力によるものだった。政府は戦前のユダヤ人人口の70パーセントを一掃した大量虐殺に加担したのだ。

●歴代の教皇のうち少なくとも2人は実在しない――ヨハネ20世はそもそも存在せず、女教皇ヨハンナについては、855年から858年にかけて男性に扮して在位していたとされる。在位中に出産して初めてその性別が判明した。群集が彼女の両足を馬の尻尾に縛りつけ、石畳の上を引きずり回して石を投げつけ殺害したと言われている。何世紀もの間、この女性の存在は広く信じられていたが、17世紀にパルセルがその説を否定する。

●13世紀の探検家マルコ・ポールの中国旅行記は、ジェノヴァの牢獄で同じく囚人だったロマンス作家に口述したものであり、およそ3分の2はつくり話である。それがどの部分かは、いまだに学者たちが議論している。

●都合よく歴史をつくりあげなかった民族や国はほとんどない。日本の最も有名な史書である8世紀の『日本書紀』は、「歴史上最大の偽書」と評されるほど捏造が多いにもかかわらず、いまだに権威を保っていて、日本史上のさまざまな政権が道具として利用してきた。

●当初からプーチンは、歴史のレトリックが彼のナショナリスト的政策に有効であることを理解していた。ソ連に対する人々の郷愁を煽るものであればなおさらである。ソ連崩壊は大半のロシア人にとって屈辱だった。・・・プーチンはたちまち(共産主義の重荷を除いた)ソ連神話と1917年以前のロシア帝国の物語を組み合わせ、独自のバージョンの歴史をつくりあげた。