榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

どの対談も、清張の質問が見事、相手の答えも見事ですね!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3983)】

【読書の森 2026年2月8日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3983)

雪――。

閑話休題、『清張が聞く!―― 一九六八年の松本清張対談』(松本清張著、文藝春秋)は、松本清張が1968年に、当時を代表する人物と行った対談集です。

個人的に、とりわけ興味深いのは、●東久邇稔彦、●大佛次郎、●橋本実斐、●桑原武夫、●松下幸之助――の5人です。

●東久邇稔彦(東久邇宮初代当主、元内閣総理大臣)「やんちゃ皇族の戦争と平和」
▶松本=石原(莞爾)という人はちょっと謎のようなところがありますね。▶東久邇=なかなかしっかりした人で、いろんなことがよくできる人でした。▶松本=東条(英機)は石原を中将どまりでやめさせた。▶東久邇=わたしは東条に「石原はあなたのいうことを聞かないかもしれないけれども、将来有望な人だから生かしておいた方がいい」と頼んでやりましたが、とうとうクビにしてしまったんです。

●大佛次郎(作家)「文学五十年、この孤独な歩み」
▶松本=大佛さんも西洋の史伝を書きたいんでしょう。▶大佛=いや、六十、七十過ぎてからでしたね。鴎外さんでもそうですね。鴎外さん、とぼくはいうけど、実に鴎外さんを好きなんです。ぼくはまだ子供だったからお目にかかるチャンスもなかった。作品を介して尊敬しているし、好きですね。▶松本=芥川龍之介なんか、どうですか。▶大佛=鴎外さんにはかなわないでしょうね。芥川さんはまだやっぱりギラギラしてるとこがありゃしませんかね。装飾が多かったような気がします。

●橋本実斐(元貴族院議員、旧伯爵)「最後の元老西園寺公の素顔」
▶松本=近衛(文麿)さんと西園寺(公望)さんの関係はどうですか。▶橋本=はじめ総理になった時分は、ごきげんよかったですね。のちにはだんだん近衛君の実質がわかってきてね、どうも考えが定まらん男だ、というようなことをいってましたね。▶松本=近衛さんが総理になってからですが、西園寺さんの考えとすこし違った考えになってきたというのは、どういうことですか。▶橋本=近衛の人となりについて、狐を馬に乗せたような人だ、といわれたことがあります。その意味がわからないから、字引きを引いてみたら、考えの定まらない男のことをいう、と出ていました。▶松本=それは近衛さんが軍部にいいようにあやつられてきたからでしょうね。▶橋本=そういうことを露骨に云われたことはありませんが、そう感じていられたのでしょう。近衛がもうすこししっかりしていればいいと思ったでしょう、きっと。

●桑原武夫(フランス文学者、評論家)「明治は日本のルネッサンス」
▶松本=維新の人物の中で、桑原さんは誰がお好きですか。▶桑原=坂本竜馬、大久保利通、井上毅、森有礼・・・。坂本以外はあまり人気がないけれども、ああいう天才的な改革者がなかったら、日本は近代国家になれなかったのじゃないかという感じがしますね。

●松下幸之助(松下電器産業会長・当時)「経営とは傘をさすことなり」
▶松下=誰でも、ああ失敗したなァ思うことはありまっしゃろ。しかしそれが、ええことに結びついてくれることもありまわな。ぼくには、どうもそれが多いんです。自分では必ずうまくいくと思うことでも、三度に一度、五度に一度は大失敗する。それがあとで、大成功に結びついてくれるんです。ですから、うまくいくことはうまくいくし、失敗したと思うことも、あとでうまくいったということの連続なんです。▶松本=運というか、チャンスというか。▶松下=早くいえばね、そういうことになる(笑)。

どの対談も、清張の質問が見事、相手の答えも見事ですね!