榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

女王エリザベス1世と海賊がスクラムを組んで、イギリスを一流国家にした・・・【続・リーダーのための読書論(9)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2011年11月8日号】 続・リーダーのための読書論(9)

女王と海賊の関係

世界史をつくった海賊』(竹田いさみ著、ちくま新書)は、読んで損のない本である。その理由は、3つある。第1は、内容が意外性に富んでいて、ともかく面白い。第2は、これまで知らなかった事実――スパイス、コーヒー、紅茶、砂糖、奴隷の裏話など――をたくさん知ることができる。第3は、仕事に役立つヒントが詰まっている。

当時のイギリスは、スペイン、ポルトガル、オランダ、フランスなどの一流国家に比べ、貧しい二流国家に過ぎなかったが、女王エリザベス1世と海賊ががっちりスクラムを組んで一流国家にのし上がったというのだから、驚きである。スペインの貿易船略奪で富み、スパイス・コーヒー・紅茶・黒人奴隷貿易で栄えたというのだ。

海賊は英雄か

この書には何人もの大物海賊が登場するが、圧倒的な存在感を示しているのが、世界周航、スペイン無敵艦隊撃破、大がかりな略奪で歴史に名を残したフランシス・ドレークだ。イギリスの国家予算の実に3年分に相当する「海賊マネー」をイギリスに持ち帰り、大口スポンサーのエリザベス女王に莫大な富をもたらしたドレークは、女王からナイト(勲爵士)の称号を授与され、国民の気持ちを一つにまとめ上げる「国家の英雄」となったのである。

強大なライヴァルに勝つ方法

強大なスペインとの全面戦争は避けられないと覚悟を決めたエリザベス女王は、あらゆるチャンスを利用して敵国スペインの国力を弱体化させることに深謀遠慮を巡らし、全力を注ぐ。この戦略に沿って、ドレークはスペイン植民地やヨーロッパ各地にスパイを配置し、敵の最新情報入手に努めたのである。①人事に関する機密情報、②敵軍が一枚岩でないとの内部情報、③敵軍の作戦情報――を手に入れることによって、敵国の弱点を見抜くことができたのだ。すなわち、感度のよい情報を迅速に入手することが、ライヴァルに勝つ神髄である。