心筋梗塞予防にはコーヒーか紅茶か、はたまた緑茶か?・・・【MRのための読書論(215)】
【栄養疫学】
三共(現・第一三共)時代の後輩・近藤孝三さんから「面白い本がありますよ」と教えられ、『行動栄養学とはなにか?――食べ物と健康をつなぐ見えない環(リンク)を探る』(佐々木敏著、女子栄養大学出版部)を手にした。
本書は栄養疫学の研究を中心に構成されているが、とりわけ興味深いのは、「相対重要性」の章の、●心筋梗塞予防にはコーヒーか紅茶か?――相対重要性を考える、●ベジタリアンとビーガン――減る病気と増える病気、●適量飲酒で寿命は延びるか?――相対危険より寄与危険、●魚(DHA・EPA)で認知症は防げるか?――単独より組み合わせ、の4テーマである。
【心筋梗塞】
「実際の観察に基づけば、コーヒー、緑茶、紅茶にはすべて心筋梗塞を予防する効果があり、その効果はほぼ同じです」。
我が家では、緑茶、紅茶、コーヒーをよく飲むので、一安心。
【菜食主義】
ビーガンは動物性の食品はまったく食べず植物性の食品だけを食べる人たちである。一方のベジタリアンは動物の肉を食べない人たち全体を指し、ビーガンだけでなく、卵も乳製品も食べる人たちや、卵は食べないけれど乳製品は食べる人たちも含む。
「いくつか注意すべき点はあるものの、太りぎみで欧米型の食習慣の人がベジタリアンやビーガンの食事を取り入れるメリットはありそうです。それでは、肉よりも魚が好きな日本型食習慣の人にも健康メリットはあるか? 残念ながら、こちらはまだよくわかっていないようです、特に、全体的にやせ気味の若い女性には慎重さが求められます」。
私たち痩せ型夫婦はベジタリアンやビーガンの食生活を取り入れる必要はないようだ。
【飲酒】
「『なにをどれだけ食べるのがいいの? なにをどれだけ避ければいいの?』と考えるとき、私たちは相対危険に頼りがちです。しかし、将来どんな病気にかかるかはわかりませんから、たくさんの種類の病気をまとめて考えられる寄与危険のほうが役に立つ指標です。そして、寄与危険で計算してみると、残念ながら、お酒に健康効果はなく、最期まで元気で人生を楽しむためには、1週間あたりアルコールにして70g(日本酒に換算して3.2合)が上限のようです」。
私はアルコールを一滴も飲まなくなって1年になるが、慣れると酒のない毎日というのも、なかなかいいものである。
【認知症予防】
「認知症は複雑です。魚だけ、DHA・EPAだけといった単独の栄養素や食品、そしてサプリメントでの予防は望み薄のようです。でも、脳血管性認知症には、血圧や体重、血糖の管理など、私たちにもできる予防策がすでにあり、これらが先決です。そして、アルツハイマー型認知症の予防には運動といくつかの栄養素が候補としてあげられています。これらを心がけたうえで、『豊かな社会ネットワークを保ち、明るく楽しく暮らす』ことがコツだと現在のエビデンスは教えてくれています」。
薬剤により血圧を管理し血栓を予防する。魚をよく食べ、毎日10,000歩以上歩くことを目指す。そして、社会ネットワークを保ちながら、明るく楽しく暮らすぞ!
本書のおかげで、長らくもやもやしていた4つの疑問に明快な解答が得られた。
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