榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

優柔不断を脱却するための「5段階フィルターモデル」とは・・・【MRのための読書論(158)】

【ミクスOnline 2019年2月20日号】 MRのための読書論(158)

決断力

自分は優柔不断だと認識している人にとって、『サバイバル決断力――「優柔不断」を乗り越える最強レッスン』(印南一路著、NHK出版)は、そういう自分を大きく変えてくれる可能性がある。

「優柔不断」の対極に位置する「決断力」とは、どういうものだろうか。「(決断するには)情報収集・分析・推論・予測といった思考活動が必要になります。ですから、意思決定は単なる選択ではなく、むしろ選択のための思考活動だと本書は考えます。・・・事前にできる限りの情報を集めて一定レベルの計算をすれば、選択肢の総合評価はできますが、それでも、どこかで必ずリスクを取らなければならない場面が出てきます。計算したうえで一定のリスクを取る意思決定こそが決断といえるのかもしれません」。

省力化

意思決定に当たって、留意すべきことがある。日常の些細な判断はできるだけ省力化し、重要な意思決定に注力することが、それである。「アップル創業者スティーブ・ジョブズは、いつも黒いタートルネックセーターにジーンズ、足元はスニーカーという同じ服装でした。歴代の新作発表(新製品のプレゼンテーション)の場に立つジョブズのファッションをチェックすれば一目瞭然です。・・・おそらくジョブズは、服選びにかける時間とエネルギーをビジネスの重要な意思決定に分配すると決めていたのだと思います」。

5段階フィルターモデル

決断力を身に付けるには。どうすればよいのか。著者は、優れた意思決定には「5段階フィルターモデル」が欠かせないと主張している。第1段階=Meta(メタ判断)→第2段階=Choices(選択肢の生成・絞り込み)→第3段階=Evaluation(選択肢の評価)→第4段階=Decision(決断)→第5段階=Learning(評価学習)――である。このプロセスを回すことが、意思決定の達人になる近道だと断言している。

各段階を具体的に見ていこう。Meta段階では、●真の問題は何か(意思決定の目的と問題の定義)を考える、●意思決定自体の必要度・緊急度・重要度・コストを判断する、●質にこだわるか、スピードや合意形成にこだわるかを判断する。Choices段階では、●情報を収集し、選択肢を作る、●選択肢が多い場合は絞り込む。Evaluation段階では、●各々の選択肢に対してリスクを評価する、●結果を予測する。Decision段階では、●リスクを最小にする方策を考える、●集団や組織との関係を考慮する。Learning段階では、●意思決定のプロセスと結果を評価し、次の意思決定に活かす、●振り返り、反省を行う。

「『メタ』とは英語のmetaのことで、『上位の』という意味です。つまり、『意思決定についての意思決定(判断)』、いわば『判断の判断』を意味します。じつはこのメタ判断が、意思決定の質を、効率、納得感を決定する最も重要な要素なのです」。

メタ判断に際しては、満足化原理でいくか、最適化原理でいくかを決定する必要がある。それほど重要でない意志決定は満足化原理(最大・最善の結果が得られなくとも、一定の結果で満足する。意思決定にかけるエネルギーは小さくて済む)を、極めて重要な意思決定は最適化原理(考えられる最大・最善の結果を得るために、綿密な比較・検討を行う。意思決定にかけるエネルギーは大きくなる)を選択するという判断だ。

本書には、「5段階フィルターモデル」のケース・スタディが添えられているので、実際に演習して、決断力を向上させることが可能である。