榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

医薬品卸業の頑張りを、一人でも多くの人々に知ってもらいたい・・・【山椒読書論(214)】

【amazon 『パンデミック発生! そのとき、誰がワクチンを運ぶのか?』 カスタマーレビュー 2013年7月5日】 山椒読書論(214)

パンデミック発生! そのとき、誰がワクチンを運ぶのか?――もう一つの命を支える力、医薬品卸業の真実』(鹿目広行著、ダイヤモンド・ビジネス企画)は、「なぜ、医薬品流通の最前線にいる私たち卸の営業担当者に(新型インフルエンザの)ワクチンの優先接種がなされないのか。その理由は簡単だった。多くの病院や医院に医薬品を届けるために終日仕事をしている私たちは、残念ながら医療の担い手として認めてはもらっていなかったのである。なぜ私たちの仕事は、多くの人に知られず、認められもしないのだろうか。私は決して忘れてはいない。何千人もの共に働く社員たちが、医薬品の安定供給のために心を砕いたことを。そして、医薬品卸業の果たした社会的使命に、誰も目を向けなかったことを」という怒りと哀しみに満ちている。

医薬品卸業の重要性は、ドクターを初めとする医療機関従事者、パートナーである製薬企業の社員はよく知っているが、残念ながら、一般の人たちにはほとんど知られていないという現実がある。

一般の人たちにも医薬品卸業のことを知ってほしい、という切実な思いが、最大手の社長にこの本を書かせたのだろう。これは、全ての医薬品卸業に共通する気持ちだろう。

新型インフルエンザや東日本大震災の時に医薬品卸が果たした役割は感動的であったが、こういう非常時だけでなく、医薬品卸は日々、津々浦々で、黙々と生命関連商品を医療機関に届けるという仕事を行っているのだ。医療機関の先には、病気で悩む患者がいるのである。著者は、「医薬品流通は『生命を守る』社会的インフラ」と表現している。

本書の後半で、著者が、連日、頑張っているMS(マーケティング・スペシャリスト=医薬品卸販売担当者)とSA(セールス・アシスタント=配送専門職)にもスポットライトを当てているのが、嬉しい。著者が強調しているとおり、彼ら一人ひとりの責任感に裏打ちされた活動が医薬品卸業を成り立たせているからである。

医薬品業界の一員として、本書が一人でも多くの一般の人々に読まれることを願っている。