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老化を遅らせ健康寿命を延ばす食習慣・食品とは・・・【山椒読書論(778)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年4月18日号】 山椒読書論(778)

健康寿命をのばす食べ物の科学』(佐藤隆一郎著、ちくま新書)には、健康寿命を延ばすにはどうしたらいいかが、具体的に示されている。食品生化学の専門家が最新データと科学的エヴデンスに基づき解説しているので、説得力がある。

老化を遅らせ健康寿命を延ばす食習慣・食品は?という設問に、このように答えている。
①豆類50g(納豆1パック)、玄米 茶椀1杯、手のひら半分のナッツ類などを摂取し、畜肉消費を抑えましょう。
②現在の食事に、小さめのサツマイモ1本ほど余分に摂ることで食物繊維を増やしましょう。動物性脂肪を減らし、ヨーグルト1カップを摂りましょう。
③筋量を維持するために、良質なタンパク質を含む、大豆製品、乳・卵製品、魚介類を積極的に摂りましょう。
④色のついた野菜(さらに70g)や果物(さらに100g)を摂る習慣をつけましょう。同時にコーヒー(5杯程度まで)、緑茶を習慣的に適量摂りましょう。
⑤高齢期からは、筋量維持のために乳清タンパク質、分岐鎖アミノ酸等を含む機能性食品、サプリメント等を利用し、運動を食べましょう(加齢に伴い十分な運動を継続できなくなったときに、筋量維持のために「運動をする」のではなく、種々の機能性食品を摂ることを、著者は「運動を食べる」と表現している)。
⑥ウォーキングは2000歩ごとに死亡リスクを下げます。数千歩を時速3.5km程度で歩く習慣をつけましょう。「歩こう♪歩こう♪私は元気♪」と心の中で歌いつつ。

個人的に、とりわけ興味深いのは、「老化ペースには個人差があり、若い時期から老化は進む」という指摘だ。「(研究データには)老化速度の速い人は見た目も実年齢より老けて見え、不健康に見えるということも示されています。たとえば小学校の同窓会に出席すると、同級生なのか先生なのか区別がつかない人がいて、老化速度が一様ではないことを感じたりします。ここで大事な点は、青年期以降の老化速度には個人差があり、中年期から健康指標となるバイオマーカー(血圧、心拍数、心電図、血中コレステロールなど)値を正常値に維持する食生活、運動習慣を心がけることが健康寿命の延伸へとつながるということです。また、介護が必要になる原因として脳血管疾患(脳卒中)が高い割合を占めていますので、中年期に生活習慣病の発症リスクを低く抑えることも重要です。高齢期になってから心を入れ替えたのでは遅すぎるとも言えます」。

また、個人的に著者に親近感を覚えるのは、著者が、コレステロールに関する研究で1985年にノーベル生理学・医学賞を受賞したジョーゼフ・ゴールドスタインとマイケル・ブラウンの教え子で、この研究に従事していたことを知ったからである。この研究に基づき開発されたのが、高コレステロール血症の治療薬として世界中で使用されているスタチン製剤である。スタチン製剤を世界で初めて開発したのが日本の三共(現・第一三共)で、私はそのメバロチン(一般名:プラバスタチン)のプロダクト・マネジャーを務めていたからである。