榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

田舎暮らしを「知る」「好きになる」「楽しむ」エッセイ集・・・【続・独りよがりの読書論(36)】

【読書クラブ 本好きですか? 2017年11月29日】 続・独りよがりの読書論(36)

田舎暮らしと哲学』(木原武一著、新潮社)には、著者の田舎暮らしのあれこれが綴られています。「田舎暮らしのなかにも、さまざまな対象について、『知る』『好きになる』『楽しむ』という3段階があり、田園の豊かな自然のなかでの40年間の生活は、この3つの言葉に要約されるようである。田舎暮らしにかぎらず、生活を『楽しむ』ことについて、私がもっとも気にいっているのは、『花道のつらね』(江戸時代の歌舞伎役者、五代目市川団十郎の狂歌をつくるときの名)の次の狂歌である。たのしみは春の桜に秋の月 夫婦仲よく三度くふめし(『吾妻曲狂歌文庫』)。私には、この狂歌はまさに田舎暮らしの楽しみを代弁しているかのように思われる」。

自然を語るだけでなく、随所に蘊蓄が挟まるのが、本書の魅力になっています。

野鳥観察が趣味の私にとって、「居間からバードウォッチング」の章は羨ましい限りです。「居間から庭全体を見渡せる利点のひとつが、室内からバードウォッチングができることである」。著者の庭に現れる野鳥は、スズメ、ヒヨドリ、カケス、キジ、ウグイス、ホトトギス、オナガ、メジロ、コジュケイ、アオバズク、カワラヒワ、ヤマガラ、キジバト――と、何とも豪華絢爛たる顔触れなのです。