榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

都心から30分の、オオタカが繁殖する森を守ろう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(68)】

【amazon 『オオタカの森』 カスタマーレビュー 2015年5月9日】 情熱的読書人間のないしょ話(68)

「利根運河の生態系を守る会」の野草観察会に参加し、ノアザミなど初夏の花48種を観察することができました。園芸種とは異なり地味なものが多いのですが、自然の中でしっかり生きようとしている野草たちを応援したくなります。世話役の柳沢朝江さんの説明の中で特に強い印象を受けたのは、タンポポの話です。現今は、繁殖力の強い外来種のセイヨウタンポポばかりが目について、在来種のタンポポはとんと見かけなくなってしまったのですが、ここ千葉県・流山市の利根運河の土手や隣接する理窓公園では、カントウタンポポが頑張っているというのです。セイヨウタンポポは総苞が反り返っているのですが、カントウタンポポは反り返っておらず、花の黄色が澄んでいることを、この目で確認することができました。しかし、柳沢さんは両者の交雑が拡大することを懸念しています。因みに、本日の歩数は16,141でした。

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閑話休題、我が家から歩いて20分ほどの所に、オオタカが繁殖する「市野谷(いちのや)の森」があります。秋葉原からつくばエクスプレスで25分の「流山おおたかの森駅」から徒歩5分という近さです。この地域の開発に危機感を抱き、オオタカの棲息・繁殖環境を守ろうと、この森の保全活動に立ち上がった男たちがいました。『オオタカの森――都市林「市野谷の森公園」創生への道』(新保國弘著、崙書房。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)では、オオタカの克明な生態と、男たちの長年に亘る奮闘ぶりがドキュメンタリー・タッチで描き出されています。

個人的には、「市野谷の森で確認した食痕(1997年11月~1998年10月に確認した個体数)」のリストにとりわけ興味を惹かれました。「ドバト 96、キジバト 44、カラス 21、ヒヨドリ 10、カケス 9、コジュケイ 8、ムクドリ 5、ニワトリ 4、キジ 4、ツグミ 3、シロハラ 2、トラツグミ 2、カシラダカ 2、アオジ 2、コサギ 2、コガモ 1、ヤマシギ 1、クイナ 1、ハイタカ 1、アオバト 1、フクロウ 1、スズメ 1、ヒバリ 1、カワラヒワ 1、シジュウカラ 1、メジロ 1、ウグイス 1、ノウサギ 1、合計 231」というものですが、オオタカは1年間に、確認できただけでもこれだけ食べているのです。このことは、これほど豊富な生物がこの森で棲息していることを物語っているからです。

市民の署名集めや行政への働きかけ、密猟監視など、この森の保護活動は、仲間を増やしながら、現在も粘り強く続けられています。