榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

沖縄県民の哀しみと怒りを直視せよと迫る報道写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(96)】

【amazon 『抗う島のシュプレヒコール』 カスタマーレビュー 2015年6月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(96)

登場する季節は異なりますが、我が家の愛すべき訪問者たち――ニホンヤモリ、アリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)、カネタタキ――を描いてみました。

ヤモリ

閑話休題、『抗う島のシュプレヒコールーーOKINAWAのフェンスから』(山城博明著、岩波書店)を読んで、粛然とした気持ちに襲われました。敗戦後の米軍占領時代から日本復帰へ、そして現在に至る沖縄の厳しい現実の姿を、沖縄の新聞社の報道カメラマンが40年以上に亘り撮影してきた写真と文章で摘出しています。

「米兵少女暴行事件糾弾県民大会――1995年10月21日」の8万5000人がびっしりと会場を埋めた写真、「教科書検定意見撤回県民大会――2007年9月29日」の会場を11万6000人が埋め尽くした写真からは、沸々と滾る県民の怒りが伝わってきます。そして、「『集団自決』の傷痕」の写真には言いようのない哀しみが籠もっています。

「基地と同居し、基地に支配され、基地に妨害され、基地に耐え、基地に蹂躙される。この基地植民地ともいえる沖縄の実態は、しかし、敗戦国日本の実態である。日本が戦後ずっと抱えつづける多種多様な問題群のひずみは沖縄に表出している。この現実を直視することなく戦後70年を語ろうとするのは欺瞞にすぎない。虐げられているのは沖縄だけではない。日本人のあなたでもあるのだ」という著者の言葉が、胸に突き刺さります。

「日本軍から『敵は野蛮な鬼畜米英だ。(捕まったら)女は暴行され殺される。男は戦車でひき殺される』と教えられていた住民。『生きて虜囚の辱(はずかし)めを受けず』という『戦陣訓』が浸透していた。島の青年で組織された防衛隊員は、アメリカ兵に捕まり生き延びることを恐れた。親が子の喉をカミソリや鎌で切りつけたり、日本軍所有の手榴弾を爆発させたり、紐で首を締め合ったり、樹の棒で殴ったり、農薬を飲ませたりという方法で、家族、親戚、知人友人同士が殺し合う悲惨な事態『集団自決』が、慶良間諸島では慶留間、座間味、屋嘉比、渡嘉敷の4島で発生した」。

「渡嘉敷村の第一玉砕場(2011年6月)」の写真のキャプションは、「1945年6月27日、島の人々はこの北山へ集合を命じられた。生き残った証言者によると、写真下方の広場は多数の死体が横たわり、中央の小川の滝は、上方で死んだ人々の血で染まった赤い泥水が流れていた、という」と記されています。

この写真集を手にした私たち日本人は、日本で唯一地上戦が展開された沖縄の県民が明確に意思表示した「辺野古No!」を無視することは最早許されないと、改めて強く感じることでしょう。