榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本人への逆説的すすめ10カ条・・・【情熱的読書人間のないしょ話(397)】

【amazon 『逆説の論理』 カスタマーレビュー 2016年5月27日】 情熱的読書人間のないしょ話(397)

我が家の庭のあちこちで、アジサイの原種であるガクアジサイ(白)とアジサイ(青、薄紫、白)が咲き始めました。花のように見えるのは萼(装飾花)です。散策中に、一株なのに青、薄紫の萼が混在しているアジサイを見つけました。これは根を通じて送られてくる土壌のアルミニウムの量に差があるためです。因みに、本日の歩数は10,375でした。

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閑話休題、若い時分、常識の裏をかき、意表を衝く会田雄次の逆説的論法に魅入られ、その著作をいろいろと読み漁ったのですが、一番、彼らしいと感じたのは『逆説の論理――新時代に生きる日本の英知』(会田雄次著、PHP文庫)でした。今回、久しぶりに再読して、その感を一層強くした次第です。

著者は、日本人への逆説的すすめ10カ条を掲げ、解説しています。

●バサラ(乱暴狼藉)のすすめ――「バサラの精神」というものを一言でいえば、不条理に対する抵抗とその打破の精神であり、なにものにもとらわれない自由な精神のことである。いわば形骸化した宗教や道徳を打ち破りそれから自由になってのびのびと行動することである。

●納得のすすめ――私たちはよく「腹をうち割って話をしよう」という。これはつまり、物事の理解や人間のつき合いにおいて、いわゆる理屈から切り離すことによって、本当の理解、感情や感覚や過去の体験のすべてを含んだ理解を求めようとする。これが日本人がいういわゆる「納得」というものだ。

●喧嘩・決闘のすすめ――日本でももう少し子供の時から、精神の自立と、社会的正義感を高めるための、具体的なトレーニングが必要であろう。それが「喧嘩のすすめ」である。

●見栄のすすめ――自信回復のためにはまず、見栄を張ること。「見栄のすすめ」というのはそういう意味である。最初に自信ありきである。その後に実績実数がついて来るのであって、最初に実績があって、後に自信が出て来るのではない。まず自信を持つこと。見栄を張ることはそのための具体的手段である。

●ボス教育のすすめ――なるべく若いうちから、責任ある役割を経験するとともに、責任にはその重さによって序列があることを体で知ることが大切だ。「鉄は熱いうちに打て」で、社会人になってからではもう遅いのである。

●ぜいたくのすすめ――豊かな生活とは、自分の、真の好みによって確立させて行くもので、そういう躾をする必要がある。自分にとって本当に好むものは好むといい、おいしいものはおいしい、まずいものはまずい、といえるような躾である。これが私のいう「ぜいたくのすすめ」の意味である。

●なまくら四つのすすめ――「不確実性の時代」こそ、「定めなきこそ、いみじけれ」の伝統精神を持つ日本がもっともよく適応できるはずであり、いかなる変化にも対応し得る日本型「無教条・非固定観念」の八方破れのなまくら四つ(=相撲で自分の型を持っていないこと)こそ、この時代の「基本姿勢」ではなかろうか。

●「使い分け」のすすめ――個人としては自分の生き方をもってもいい。自分が正しいと信じる生き方を断乎としてつらぬき通してもよろしい。しかし、それを他人に押しつけてはならない。人はみんなその人が正しいと思う生き方をしている。その生き方は自分と対立した生き方かも知れない。それを認めよう、そういう立場である。友人とも上の人とも下の人とも相手によってつき合う「方法」を変える。これが日本の人間関係の知恵である。

●「出来損い」のすすめ――茶器に限らず、日本美術の特質は、ヨーロッパ流の形容でいえば、不整合、不均衡、歪み、誇張、欠如、未完、浮遊、すべて出來損いとして否定さるべき点を逆に積極的に肯定し主張しているところにある。

●日本的知的生活のすすめ――私たちは「ながら」ができるスピードの限度を今こそ知るべきである。この限界内なら、いろいろなアイデアを出せといわれれば、日本人はどしどしと出すに違いない。

著者の論理が、時を経ても一向に古びていないことに驚かされます。