榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

蚊は、二酸化炭素・匂い・熱を目印に刺すヒトを探している・・・【情熱的読書人間のないしょ話(553)】

【amazon 『なぜ蚊は人を襲うのか』 カスタマーレビュー 2016年10月7日】 情熱的読書人間のないしょ話(553)

散策中に、アキアカネの交尾をカメラに収めることができました。姪から、一族郎党が集まって会食した時のスナップ写真が送られてきました。思いがけない心遣いに夫婦で大喜びしています。因みに、本日の歩数は11,872でした。

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閑話休題、『なぜ蚊は人を襲うのか』(嘉糠洋陸著、岩波科学ライブラリー)を読んで、目から鱗が何度も落ちました。

「代々木公園で見つかったような都市型のデングウイルス感染では、人間だけが宿主となります。そもそも、東京などの大都会で圧倒的に繁栄している動物種は、ホモ・サピエンス(つまりは私たち)です。よって、そこに棲む蚊がその生活を人間に依存するのは必然です。普段あまり意識されることはないですが、公園や藪などに潜み、血を吸ってイライラさせる蚊は、実に私たち自身が血というご馳走を与えて、彼らの繁殖を助けているのです。日本でデングウイルスをまきちらした首謀者は、ヒトスジシマカでほぼ間違いないでしょう。ヒトスジシマカやネッタイシマカのような多くのヤブカ種は、吸血の際にウイルスを取り込み、その体内で増殖の場を与えます。その蚊が再びヒトを刺した際に、ウイルスを注入し、新たな感染を成立させます」。

蚊は、何を目印にして吸血源を探し当てるのでしょうか。「蚊はあてもなく彷徨っているわけではありません。なるべくコストパフォーマンスよく標的を探すように『プログラム』されています。それは、大きく分けると、認識→誘導→着地の3段階方式になります。蚊に対して、『獲物が来タゾ』と最初の気づきを与える役目を持つのが、二酸化炭素です。種にもよりますが、無風で約10メートル前後の距離が、その効果の及ぶ範囲です。次いで、動物から発せられる匂いを主な頼りに、徐々に標的に近づいていきます。二酸化炭素も、単独または協調して、誘導に仕向けるようです。上手に忍び寄ることに成功したら、最後はその生き物が出す熱を認め、『我獲物ヲ見ツケタリ』とヘリコプターさながら皮膚に降り立ちます。遠距離(二酸化炭素)・中距離(匂い)・短距離(熱)の各目印の見事なリレー的活用です」。

●ヒトの血を吸うのは、産卵準備中の雌だけ、●病原体を体内に持っているのに、蚊が病気にならないのはなぜか、●病原体を持つことは、蚊にとって得か損か、●ヒトと蚊との全面戦争の過去・現在・未来――など興味深い内容が満載ですが、私が驚いたことが2つあります。1つは、平清盛の死因はマラリアだった、もう1つは、『堤中納言物語』の「虫めづる姫君」に、蝶を捕らえると瘧病(マラリア)になると書かれている――という指摘です。遠い平安時代に、蚊とは名指ししていませんが、当時の日常の病気であったマラリアと昆虫の密接な関係に言及しているのです。