榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

連城三紀彦の熱烈ファンの手になる連城の全作品ガイドブック・・・【情熱的読書人間のないしょ話(880)】

【amazon 『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド』 カスタマーレビュー 2017年9月14日】 情熱的読書人間のないしょ話(880)

多くの古書店が集まっていることで知られる東京・神保町の読書会「神保町サロン」から招かれ、質問に応ずるままに、長時間、私の本との付き合い方や恋愛至上主義について熱弁を振るってしまいました。帰宅後、女房から、聞かされるほうの皆さんはご迷惑だったのでは、と言われました。しかし、若い人たちとの意見交換は、いい刺激になるだけでなく、思いもかけないアイディアをもたらしてくれるので、私にとって貴重な時間です。因みに、本日の歩数は10,247でした。

読書会の場で、私の好きな恋愛小説として、失恋を扱った『はつ恋』(イワン・セルゲーヴィチ・ツルゲーネフ著、神西清訳、新潮文庫)と『友情』(武者小路実篤著、岩波文庫)、究極の恋愛を描いた『雲の宴』(辻邦生著、朝日新聞社、上・下巻。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)、恋愛の根源に迫った『赤目四十八瀧心中未遂』(車谷長吉著、文春文庫)、不倫が恐ろしい事態を生み出してしまう『飾り火』(連城三紀彦著、新潮文庫、上・下巻。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)、恋愛小説ではないが、女性の魔性を抉り出した『避暑地の猫』(宮本輝著、講談社文庫)――を挙げたばかりだというのに、『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド』(浅木原忍著、論創社)には、連城三紀彦はミステリ作家だと書かれているではありませんか。

私は連城の作品はいくつか読みましたが、ミステリ作家と認識したことはありませんでした。サスペンスという薬味を利かせた手練れの恋愛小説作家と思い込んでいたのです。

『ミステリ読者のための連城三紀彦』では、『飾り火』は、このように紹介されています。「●あらすじ=藤家芳行は、金沢へ向かう列車の中で、新郎に逃げられたまま新婚旅行中の女と出会い、誘われるまま一夜を共にする。芳行の妻・美冴は、夫に微かな裏切りの気配を感じながらも、それに確信を持てないまま日々を過ごすが、彼女は気付いていなかった。夫との平穏な関係、結婚相手を突然連れてきた息子の雄介、高校生になったばかりの娘の叶美・・・23年かけて築いてきた幸福な家庭が、既にひとりの女によって壊され始めていることを――」。「●改題=本作は80年代後半の恋愛小説群を経て生み出された、ミステリと恋愛小説を融合させたエンターテインメントであり、このあとに続く90年代前半の連城作品群の先陣を切る傑作である」。

「89年頃を境に、連城は(ミステリの世界から)再び嘘と演技、操りの世界に急速に舵を切る。最初の契機はやはり『飾り火』であろう。ひとりの女の狂気がひとつの家庭を破壊する過程、妻の反撃によって始まるコン・ゲーム(騙し合い)、そしてその裏に隠されていた真実――いずれも明瞭な操りテーマを見てとることができる」。

著者の浅木原忍は、連城のミステリ作品の熱烈なファンです。連城という作家がいたことを、もっと多くの人々に知ってもらいたいという熱意が、浅木原に本書を書かせたのです。こういう愛情溢れる全作品のガイドブックを執筆してくれるファンに恵まれた連城は、本当に幸せな作家ですね。

連城ファンは言うまでもなく、連城という作家を知らない人、連城作品を読んだことのない人にも、ぜひ手に取ってもらいたい、情熱が書かせた案内書です。どれか連城作品を一冊、読み終わった時、あなたは連城ファンになっていることでしょう。