榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

風情のある宿場町をそぞろ歩きしている気分が味わえる写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(941)】

【amazon 『宿場町旅情 写真紀行』 カスタマーレビュー 2017年11月15日】 情熱的読書人間のないしょ話(941)

今朝は濃い霧が立ち籠め、幻想的な世界が出現しました。我が家近くの公園では、ソメイヨシノの落ち葉が敷き詰められています。小さな花ながら、キクが存在感を漂わせています。因みに、本日の歩数は10,385でした。

閑話休題、『宿場町旅情 写真紀行』(清永安雄写真、志摩千歳・佐々木勇志文、産業編集センター)は、宿場町をそぞろ歩きしている気分が味わえる写真集です。

全国の22の宿場町が取り上げられ、その見所が木目細かく紹介されています。

「奈良井宿(中山道、長野県塩尻市奈良井)――標高930メートルの山間にある日本最大級の宿場町」は、このように綴られています。「国の保護と規制のもとで様々な整備がなされてきた。電柱は地下に埋められ、街道沿いの家並みは往時のままの姿を保ち、奈良井ならではの建築様式も守られ、限りなく江戸時代の宿場町の町並みに近づいているように見える」。「軒先と軒先がぶつかり合いそうな、奈良井宿の家並み」。

「妻籠宿(中山道、長野県木曽郡南木曽町)――日本で初めて江戸時代の宿場町を保存復元した町」は、このようです。「もともと木曽十一宿の中では一番小さかった妻籠宿が、今では日本の宿場町を代表する存在となっている。それはもちろん地元の人々の努力によるものが大きいが、妻籠という町全体に漂う独特の空気感に魅了される来訪者が多いせいだと思う。妻籠の質朴でしっとりと大自然にとけ込むかのような町並みは、私たちの中から失われつつある古き良き日本の懐かしい原風景を思い起こさせてくれるのだろう」。

「馬籠宿(中山道、岐阜県中津川市馬籠)――藤村の面影が色濃く残る坂道の宿場町」は、言わずと知れた島崎藤村生誕の地です。「馬籠宿は、街道が山の尾根に沿った急な斜面を通っている『坂道の宿場』だ。今も石畳の街道の両側に、家々が一段ずつ石垣を築いて平たくし、その上に家を建てており、板屋根はさすがにあまり見られないものの、町の様子は藤村の頃とあまり変わっていないことがわかる」。

「大内宿(下野街道、福島県南会津郡下郷町)――30棟の江戸期茅葺き民家が残る、奇跡の宿場町」の雪景色は、幻想的です。「冬の大内宿。茅葺き屋根がみな、綿帽子をかぶっている」。「(戊辰戦争で焼けなかった)幸運と、近代化から取り残された不運とが要因となって、江戸時代の旧宿場町でしかも全家屋が茅葺きという、奇跡に近い町並みが残された」。

「海野宿(北国街道、長野県東御市本海野)――柳並木と水路、宿場町の原風景を残す町」の特徴が説明されています。「養蚕はその後、歴史の流れとともに衰退していったが、養蚕最盛期の明治・大正時代に建てられた堅牢な蚕室造りの建物は今も残っている。これらの建物と、江戸時代に建てられた旅籠屋造りの建物とがほどよく調和し、それぞれの特徴を主張しながら街道筋の町並みを形成しているのが、海野宿の一番の特徴であり、魅力といえるだろう」。「街道自体の美しさもここの良さである。宿場の入り口に立って、その直線的な街道筋を眺めたとき、『なんて風流な町並みなんだろう』と思った。真ん中をまっすぐに水路が貫き、それに沿ってたおやかな柳並木が続く。水路の両側には街道があり、美しい海野格子がはめ込まれた家々が建ち並ぶ」。

訪れたことのある奈良井宿、妻籠宿、馬籠宿。大内宿、海野宿を懐かしく思い出してしまいました。そして、「板取宿(北国街道、福井県南条郡南越前町板取)――兜造り屋根が美しい、茅葺きの小さな宿場町」にも行ってみたくなりました。