榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

妻が突然、地下室に籠もってしまったら、あなたならどうする?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1111)】

【amazon 『タンゴ・イン・ザ・ダーク』 カスタマーレビュー 2018年5月7日】 情熱的読書人間のないしょ話(1111)

野鳥観察会でしたが、いろいろな昆虫も観察することができました。緑色の地に赤い斑が入ったアカスジキンカメムシの成虫と、似ても似つかぬ模様の幼虫が見つかりました。満開のエゴノキから、葉(揺籃)にくるまったエゴツルクビオトシブミの卵・幼虫がぶら下がっています。シャクトリムシ(シャクガの幼虫)が風に揺れています。トノサマバッタの幼虫と思われるバッタが飛び跳ねています。カマキリの幼虫が歩いています。オオヒラタシデムシが枯れ葉に潜り込もうとしています。ヒメウラナミジャノメが飛び回っています。ミスジマイマイを見つけました。

閑話休題、『タンゴ・イン・ザ・ダーク』を読み始めてから読み終わるまで、自分が主人公になったかのような錯覚に囚われっ放しでした。

N市役所で仕事に追われている35歳の「僕」が、珍しく休日出勤がなかった土曜日、朝寝坊して11時近くに起きてきたところ、リビングのテーブルにメモ用紙が置かれています。それには、「しばらく地下室にいます。何かあったら電話かLINEください。K」と書いてあるではありませんか。

Kというのは、3年前に結婚した1歳年下の妻の名前で、地下には、結婚当初、僕がフルート、Kがクラシックギターでピアソラやバッハの二重奏を楽しんだ防音完備のオーディオルームがあるのです。「いやな感じがした。地下にはオーディオルームだけではなく、小さなキッチンとトイレ、シャワーまで設置されている。そして、それらの設備はすべてこのドアの向こうにある。つまり、一度地下に下りて鍵をかければ、理論上、地上の住人と一切コンタクトをとることなく生活を完結させることが可能なのだ」。

「Kはなかなか地下から出てこなかった」。Kが地下に潜って1カ月以上が過ぎてしまいました。

僕は漠然とした違和感に気づきます。「――どんな顔だっけ? 思い出せないのだ。あのころのKはもちろん、今のKの顔も」。

遂に我慢ができなくなった僕は、地下室に行き、K の顔を見ようと、いろいろ試みますが、うまくいきません。

物語の後半は、謎を秘めたまま、地下の暗闇の中で音楽的かつ官能的な世界が展開していきます。

もう何が何やら分からず、頭がくらくらしてしまう、世にも不思議な小説です。