榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

別れたはずの不倫相手が自宅に浴室クリーニングサービス員としてやって来たら、あなたならどうする?・・・【山椒読書論(812)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年12月20日号】 山椒読書論(812)

コミックス『黄昏流星群(70)――鬼の星家』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「星影はるかに」は、恐ろしい作品である。

「三流大学を出て小さな商社に就職して、普通の人生を送っていた」仲村一郎は、「作家生活20年で、今や押しも押されもせぬベストセラー作家」になっている。「ペンネームを『篁 次郎』と名乗っているので、周囲の人間は俺が作家とは誰も知らない。作家の素性がミステリーというのも、ある種の作戦だ。従ってマスコミには一切顔を見せないできた」。

そんな彼に、大学時代に同じ県人会の寮にいた先輩・丹沢和樹の葬儀の案内状が送られてくる。

仲村一郎として出席した葬儀の場で、当時、付き合っていた××女子大の六田洋子とばったり出会う。洋子は俺を捨てて、東大法学部の丹沢に乗り換えてしまったという苦い過去がある。

丹沢とは結婚していなかった洋子から声をかけられ、34年ぶりに付き合いが再開する。

洋子と再び肌を合わせ、付き合いが深まっていくが、洋子に関する恐ろしい情報がもたらされる。付き合いを止めようと洋子に電話した仲村の自宅に、浴室のクリーニングサービス員としてやって来たのは、何と洋子ではないか!