榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

弁護士の所得の低さと、新司法試験合格者の質の低下にびっくり・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1137)】

【amazon 『弁護士の格差』 カスタマーレビュー 2018年6月3日】 情熱的読書人間のないしょ話(1137)

チョウ観察会に参加しました。ノコギリクワガタが交尾しています。その近くにサトキマダラヒカゲがいます。アカシジミ、ルリシジミ、ムラサキシジミ、イチモンジチョウ、コミスジ、ヒカゲチョウ、アゲハチョウ、オオミズアオ、カノコガなどを観察することができました。なお、捕獲した個体は、観察後、解放しました。因みに、本日の歩数は17,938でした。

閑話休題、『弁護士の格差』(秋山謙一郎著、朝日新書)によって、弁護士の現状を具体的に知ることができました。

弁護士界の実情は、このように記されています。「ビジネスとしてみた弁護士界は、顧客からのニーズ(依頼事件)がすくないにもかかわらず、供給(弁護士の数)が上回る『供給過多』の状態だ。今、弁護士たちは、ただでさえ小さなパイを、ベテラン、中堅、若手関係なく、奪い合っているという現状がある」。

「太田真也弁護士(東京弁護士会)の言葉を借りれば、今、弁護士界は、その費用面と提供する司法サービス内容は、さしずめ『<街弁>=高級料亭=トータルパック』『<新興法律事務所>=ファミレス=依頼者にとって必要なサービスをその都度提供』『<格安弁>=全国チェーンの牛丼店にみられる激安店=トータルパック』といった図式だ。依頼者からみた『弁護士像』、そして『弁護士費用』も、見事に、これに一致する。どういう弁護士を選ぶかは依頼者自身だが、やはり、そこには『弁護士費用』の問題が立ちはだかる。依頼者心理として、弁護士費用が『安価』であるに越したことはない。だが、『安価』ゆえに依頼者の権利が守られないようでは本末転倒だ。依頼者もまた『高額』だからといって弁護士を無条件に信用してやいないだろうか。依頼者にとって、生涯に一度、頼むか頼まないかの弁護士だ。だからこそ依頼者は『費用』という側面からも弁護士を見極める目を持つ必要がある」。

「今、弁護士界は高度な技を提供する<法律家>から、徹底したマニュアル化で多くの数を捌く『ファスト・司法サービス』という業への端境期ともいえる。<新興大手>法律事務所台頭で、苦境に喘ぐ<街弁>といったところだ。これは大手の進出で商売が立ち行かなくなった『個人商店』と『商店街』の様子を彷彿させる。これまでは、こと、離婚や相続、債務整理にみられる民事事件については、俗に『八百屋弁護士』とも呼ばれる<街弁>、つまり『個人商店』だけで取り扱っていた。当然、個人商店にも規模の違いはある。職人の世界でいう『ひとり親方』よろしく商店主である<ボス弁>たったひとりで頑張っているところ、共同経営者(パー弁:パートナー弁護士)がいるところや、従業員(イソ弁)を雇っているところもある。なかには、その軒先を借りて商売をしている個人事業主(ノキ弁)がいるところもある」。

弁護士のスキル格差が指摘されています。「<旧司法試験>から<新司法試験>への転換でこれ(法曹の質)がぐっと低くなったという。『年々、弁護士の<質>はたしかに落ちている。旧司では箸にも棒にもかからなかったような人が、巡り合わせで、法科大学院に進学し、新司ではひと桁合格した』。関西のある私立大学で法科大学院の教授も務めるベテラン弁護士は、<新司組>が<旧司組>に比して、その力が劣っているという実態を、こう語った。『弁護士余りが伝えられてから、余計、この傾向が加速化している。教え子たちをみていると、5年前なら絶対に司法試験に合格できなかったような子でも受かっているという現実がある』。<旧司組>なら誰でも知っているような高度法律専門職としての基礎的な知識も、<新司組>の法曹たちは持ち合わせていないという声を多々耳にする。地方銀行の法務担当者がその実態を次のように明かす。『民法と刑法の知識が、長年、企業で法務職に携わっている者よりも、明らかに<新司組>の弁護士は劣っていた』」。

弁護士の低所得化が顕著になってきています。「今、弁護士の1年当たりの所得の中央値は『約400万円』で、じつに弁護士の半数が平均的サラリーマン以下である――。2014年、国税庁が発表した『所得種類別、所得金額』を分析すると出てきた結果だ。これは今や弁護士界でもよく知られている。年収ではなく『所得』であるところ、ここが弁護士の懐事情を如実に表しているといえよう。同種の調査結果は他にもある。日本弁護士連合会(日弁連)が発行する『弁護士白書2015年版』に、その所得について行ったアンケート結果が掲載されている。これによると回答を寄せた3128人中、もっともその割合が高い666人が、『年間所得額200万円以上、500万円以下』と回答している。『年間所得額200万円以下』が466人、『0円以下』も79人いた。この結果を妥当とみるか、意外とみるかは人それぞれだ。だが、今や、弁護士とは、決して『稼げる職業』ではなく、ともすれば『ブラック企業並み』の低所得に甘んじなければならない可能性のある職業へと化したことを如実に物語っていることは確かだ。弁護士が『高収入』職業の代表格だったのは、せいぜい1990年代のバブル崩壊前後までといわれている」。「収入-必要経費=所得」にしても、この所得の低さには驚かされます。

「(早くから新聞やインターネット各種で広告・宣伝に力を入れているという50代の)ベテラン弁護士は、2016年度の総売上高は1,800万円だったが、約500万円のホームページや広告費の他、『コールセンター費用80万円』『事務所家賃など700万円』と、諸経費合計1280万円。また弁護士会費が年間約60万円、税金や国民健康保険を支払うと、手元に残るのは年200万円にも満たない。・・・ベテランといえども低所得に甘んじている実態がある」。

弁護士の世界にこれほどの変化が起こっていたとは――まさに驚きの一冊です