榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

読書・書評の達人たちによる鼎談集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1176)】

【amazon 『三人よれば楽しい読書』 カスタマーレビュー 2018年7月14日】 情熱的読書人間のないしょ話(1176)

母校の東京・杉並区立松溪中学の赤荻千恵子校長から依頼された「卒業生と語る会」の講師を務める日がやって来ました。1年生、2年生、3年生からの当時の学校生活に関する30件ほどの質問に答えた後、「●私は、どんな松溪中学生だったのか、●中学時代に、私にとって生涯を左右する大きな変化が起こった! ●もう一度、松溪中学生になれるなら、どういう中学生になりたいか、●中学時代に好きなことを一つは見つけよう!――という話をしました。若く元気な中学生たちと話し合えたことで、若返ることができました。猛暑の中、数十年ぶりに当時の通学路を辿り、懐かしさが込み上げてきました。今シーズン初めて、ミンミンゼミの鳴き声を耳にしました。因みに、本日の歩数は14,736でした。

閑話休題、『三人よれば楽しい読書』(井上ひさし・松山巖・井田真木子著、西田書店)は、井上ひさし、松山巖、井田真木子による鼎談書評集です。

書評について、こういうやり取りが展開されています。「●松山=一度、高田宏さんが3、4枚の書評のほとんどを引用で占めちゃったことがあったんです。つまり私としてはここを読んでほしいというところを、できるだけ引用するけれども、あとは読者が想像して買ってほしいということなんですが、読んでよく分かった。それはいい書評でした。こういうやり方は二度とできないですけど(笑)。●井田=そうですね。禁じ手ですね。●井上=二度とできない書評といえば、アメリカのグラウチョ・マルクスという喜劇役者が、『ニューヨーク・タイムズ』に書評を頼まれて、みんな期待していたら、3行くらいの書評が来た。『素晴らしい本である。私も暇があったら一度読んでみたい』。これは、売れたらしいですよ(笑)」。書評を書くのが趣味の私には、高田宏の気持ちがよく分かります。

立花隆の『ぼくはこんな本を読んできた』を巡って。「●井上=どんな大学も常に図書館から始まるという意味では、(新しいタイプの)哲学者であるとともに、『立花大学』とでもいうようなものを作っていらっしゃる最中なのかもしれません。これはその一端を見せる本ですね。●井田=おっしゃる通りです。ただ、立花さんフリークとしては是非とも開架図書館にしていただき、立花さんの頭の中をもっと覗かしてほしいという気持ちもありますね」。

ロナルド・ケスラーの『汝の父の罪――呪われたケネディ王朝』を巡って。本書は、ジョン・F・ケネディの父、ジョー・P・ケネディの一代記です。「●井上=権力と富と保身のために、いろんな人と駆け引きをしながら付き合いますね。・・・次から次へと人名が出てきて多少混乱しますが、その駆け引きの凄さには驚嘆します。●松山=ツヴァイクの『ジョゼフ・フーシェ』も権謀術数の凄まじさを描いてますが、ケネディはもっと身近だからショックですよ」。「●井上=こんなに圧倒されたのはもう何年ぶりだったか・・・。本堂に凄まじい本でした」。私の愛読書『ジョゼフ・フーシェ』に匹敵する本、井上がこれほど圧倒された本を読まないで過ごすわけにはいきません。直ちに「読むべき本」リストに加えました。

マイケル・ギルモアの『心臓を貫かれて』を巡って。「●井上=20世紀のドストエフスキー的作品です。なによりも強調したいのは、この本が物語の書き手、読み手を究極のところで励ましているということです。人間という危なっかしい存在について深く鋭く書かれているせいでしょう。僕も小説が、物語が書きたくなってきました。本当に読んでよかった」。

日高敏隆・竹内久美子の『もっとウソを!――男と女と科学の悦楽』を巡って。「●松山=繰り返し出てくるテーマに、オスとメスでは結局メスのほうがしたたかである、というのがありますね。生殖の問題なんかに出てくるんですけど、それをいろいろ実証してみせる。それがおかしいんだな。一見馬鹿馬鹿しいような研究で・・・(笑)。●井上=ここは読みどころです。でもここで細かくしゃべると、読者の楽しみを奪ってしまうなあ(笑)・・・」。「●井上=面白くて頭のいい、明るくてへんな頓智のきく女の子が、頭の柔らかいご隠居さんのところへ飛び込んできて跳ね回っているうちに、あぅ、いいこと考えた、とパッと書いちゃう(笑)。そうして次々に人を驚かせるんだけど、でも真実を衝いている、という感じですね」。