榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

フェイク・ニューズについて考えさせられる小説・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1311)】

【amazon 『歪んだ波紋』 カスタマーレビュー 2018年11月25日】 情熱的読書人間のないしょ話(1311)

紅葉・黄葉観察会では、紅葉、黄葉だけでなく、いろいろな植物を観察することができました。ヒマラヤスギの球果は熟すと落下します。落下した球果の先端はバラの花のような形をしているので、「シダーローズ」と呼ばれます。一方、雄花は黄色い花粉を撒き散らし、落下します。シロダモが薄黄色の花と赤い実を付けています。クサギが、星形の桃色の萼の上に青い実を載せています。イチイ、アオキが赤い実を付けています。トウネズミモチが黒い実を、ヌルデが房状に茶色い実を付けています。水辺ではオギが群生しています。セイバンモロコシの穂が風に揺れています。シャクチリソバが白い花を咲かせています。

閑話休題、短篇集『歪んだ波紋』(塩田武士著、講談社)に収録されている『歪んだ波紋』は、フェイク・ニューズについて考えさせられる小説です。

「新聞記者時代、三反園は日刊の忙しなさからノルマの処理を優先し、紙面を整えることばかり考えていた。本すらまともに読めない日々が続き、そんな自分に段々と嫌気が差していった」。

「出来る限り無料、もしくは安価で、硬軟のバランスが取れた分析力の高いニュースサイト――それが三反園の理想だった」。

大手新聞社・大日新聞東京本社の社会部デスクから独立系のネット・ニューズ媒体「ファクト・ジャーナル」の編集長に転じた三反園邦雄は、ある日、近畿新報の元役員の安田隆から、一緒に組んで、世間をあっと驚かせるスクープをものにしようと誘われます。

そのスクープとは、戦後最大の経済事件と言われた「イノショウ事件」や火災で大惨事となったホテルの跡地買収を巡って暗躍し、そして、保釈中に失踪し、刑期の途中で韓国の刑務所へ移送された、「最後のフィクサー」と呼ばれた大物事件師・安大成に独占インタヴューし、掲載しようというものです。「安大成が起こした数々の事件の裏側については、もちろん知りたい。今明らかになっている事実は、検察側が描いたシナリオとさほどの距離がない。たった一人であっても、当事者しか知らない出来事に触れると景色が一変することはよくある話だ。しかし、三反園の興味の対象は、事件の中身よりも『安大成』という人間そのものだった」。

独占インタヴューは成功し、「ファクト・ジャーナル」の記事は各方面に大反響を巻き起こします。

ところが、何と、この記事はフェイク・ニューズだったのです。そして、このフェイク・ニューズを陰で仕掛けた者たちの驚くべき狙いが明らかにされていきます。