榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

昭和戦前期から今日までの日本画の歩みを概観できる一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1353)】

【amazon 『日本画の歴史 現代篇(カラー版)』 カスタマーレビュー 2019年1月2日】 情熱的読書人間のないしょ話(1353)

シジュウカラ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、コガモの雄、コサギをカメラに収めました。因みに、本日の歩数は10,835でした。

閑話休題、『日本画の歴史 現代篇――アヴァンギャルド、戦争画から21世紀の新潮流まで(カラー版』(草薙奈津子著、中公新書)のおかげで、私のような日本画の門外漢でも、昭和戦前期から今日に至るまでの日本画の歩みを概観することができました。カラー版なので、実物を見ている気分を味わえます。

現代日本画の流れを乱暴にまとめると、明治維新期から止まることなく続いてきた、西洋画に学び多くのことを取り入れた近代化という西洋化からの解放の軌跡と言えるのではないでしょうか。著者は、「近代以降連綿と続いてきた『日本画』から『日本の絵画』が誕生した」と述べています。

個人的にとりわけ印象に残ったのは、片岡球子の「面構(つらがまえ)」シリーズの「面構一 足利尊氏」、「面構二 足利義満」、「面構三 足利義政」です。著者が言うように「ほかの人が真似できない作品」です。

丸木位里(いり)・俊(とし)夫妻の「原爆の図」全15部も印象が強烈です。「広島出身の丸木位里は原爆投下の3、4日後にはもう広島に入っていました。ほどなく妻の俊も広島入りしました。その結果、俊が体調を崩し藤沢で静養することになったのです。『原爆の図』制作を思い立ったのはこの静養中でした。日本画家の位里と油絵画家の俊の合作になるこの作品は、1950(昭和25)年から82年にかけて、全15部の連作として制作されたのです。『第一部 幽霊』『第二部 火』『第三部 水』『第四部 虹』『第五部 少年少女』『第六部 原子野』『第七部 竹やぶ』『第八部 救出』『第九部 焼津』『第一〇部 署名』『第一一部 母子像』『第一二部 とうろう流し』『第一三部 米軍捕虜の死』『第一四部 からす』『第一五部 長崎』です。特に第一、二、三部は『初期原爆の図』と称され、全国で巡回展示されました。最初の3年間で全国170ヵ所, 約170万人が観たといいいます」。私も実物を見たことがあるが、戦争の悲惨さ、悲しみ、苦しみ、理不尽さを余すところなく伝わってきました。