榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

谷戸に建てられた一軒の茅葺き農家と、そこに暮らす家族の150年間の移り変わりを、じーっと見詰めた絵本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1967)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年9月2日号】 情熱的読書人間のないしょ話(1967)

コノシメトンボの雌(写真1、2)、シオカラトンボの雄(写真3)、ハグロトンボの雄(写真4~8)、雌(写真9、10)をカメラに収めました。

閑話休題、絵本『やとのいえ』(八尾慶次作、偕成社)には、東京の西南部の多摩丘陵のある谷戸(やと。谷津、谷地、谷那などとも呼ばれる)に建てられた一軒の茅葺き農家と、そこに暮らす家族のおよそ150年に亘る移り変わりが描かれています。

1868(明治元)年から、1892(明治25)年、1926(大正15)年、1935(昭和10)年、1945(昭和20)年、1950(昭和25)年、1955(昭和30)年、1965(昭和40)年、1967(昭和42)年、1969(昭和44)年、1972(昭和48)年、1977(昭和52)年、1981(昭和56)年、1987(昭和62)年を経て、2019(平成31)年に至る変化の激しさには、目を瞠らされます。

本書の魅力は、3つにまとめることができます。

第1は、一軒の農家とその周辺を定点観測することによって、押し寄せる時代の変化が明瞭に感じ取れること。

第2は、それぞれの時代の人々の生活ぶりが季節感豊かに、かつ精密に描かれているので、自分もその場に立ち会っているかのような気分になれること。

第3は、絵に添えられた文章が簡潔で、子供にも理解できるように書かれていること。これに対して、巻末の解説は行き届いているので、絵の細かい部分についても理解を深めることができること。

本書を読みながら、あれこれ子供との会話が弾むこと間違いなしの意欲作です