榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

トマトが食べ物として受け容れられるまでには、受難の歴史があった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1702)】

【amazon 『トマトの歴史』 カスタマーレビュー 2019年12月13日】 情熱的読書人間のないしょ話(1702)

東京・中央の聖路加国際病院、小伝馬町牢屋敷展示館を訪れました。小伝馬町牢屋敷は吉田松陰が刑死した場所として知られています。因みに、本日の歩数は13,112でした。

閑話休題、『トマトの歴史』(クラリッサ・ハイマン著、道本美穂訳、原書房)は、トマトについて、実にさまざまなことを教えてくれました。

トマトが世界のどこで誕生し、どのような歴史を辿って世界中に広まったのか、観賞用としてスタートし、やがて食べ物として受け容れられるまでの受難の歴史、さらには、トマトの栽培の現状と課題に至るまで記述されています。

トマトは南アメリカのアンデス地方、現在のペルーやエクアドルが原産地で、アステカ族がメキシコで栽培を始めたと言われています。大航海時代にスペインに広がり、やがてヨーロッパ全域、北アメリカ、アジアへと広まっていきました。しかし、当初は、トマトは毒がある、怪しい植物、禁断の果実などと恐れられ、食用ではなく観賞用でした。トマトが人々に広く愛されるようになったのは19世紀以降、ヨーロッパに伝わってから実に300年近くもかかったことに驚かされます。また、トマトがこれほど世界に広まったのは、生のトマトだけでなく、トマトジュースやケチャップなどの加工食品の力も大きかったのです。

訳者が、日本のトマトに言及しています。「日本のスーパーマーケットでよく見かけるトマトと言えば『桃太郎』だ。1960年代、都市近郊の農地が宅地化されトマトの産地が遠くなったために、トマトは完熟前に収穫され『まずい』『青臭い』と言われるようになっていた。20年の年月をかけて開発され1985年に発売された桃太郎トマトは、熟れてから収穫しても傷みにくい厚い果肉と甘さを両立した、日本オリジナルの品種である。今では国内シェアの7割を占める。トマトなのになぜ桃太郎?と思うが、『誰もが知っている、フルーツ感覚の名前にしたい』ということから名付けられたそうだ。日本人がトマトを生で食べることを好むのは、この桃太郎トマトのおかげかもしれない」。

これからトマトを食べるときは、トマトの歴史に思いを馳せながら味わうことにします。