榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大寒冷期が社会の大変革をもたらした・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2633)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年7月2日号】  情熱的読書人間のないしょ話(2633)

ハグロトンボの雄(写真1、2)、オオシオカラトンボの雄(3~5)、雌(写真3、6、7)、サキグロムシヒキ(写真8)をカメラに収めました。撮影助手(女房)がウラナミアカシジミ(写真9)とヤブキリの雄(写真10)を見つけました。セイヨウニンジンボク(写真11~13)が咲いています。

閑話休題、『気候変動と「日本人」20万年史』(川幡穂高著、岩波書店)の著者・川幡穂高は古気候学者で、「大寒冷期が社会の大変革をもたらした」と主張しています。

「日本列島にやってきたヒトに焦点を絞ると、ホモ・サピエンスは4万5000年前には極東アジアに到達していたが、最初の集団が日本にやってきたのは、それから数千年以上経過した3万7500年前頃であった。彼らは大陸からやってきて、打製石器を用いて生活していた。骨が発掘されていないので、どのような遺伝子をもったヒトなのかは不明である。当時は、地球規模の、短周期かつ急激に変化する気候変動の真っ只中で、気候は寒冷期と極寒冷期を数十年ごとに繰り返していた。彼らは食料調達をはじめ生活に苦労したはずである。その後も。大陸からさまざまな遺伝子をもったヒトが断続的に日本へ移住してきた。この移住は平安時代にほぼ終了し、その後は日本列島内で混血が進み、日本人の遺伝子グループが確立した」。

「日本列島の総人口は、縄文時代開始期には約10万、温暖な中期には約26万、弥生時代には約60万人、奈良時代に約500万、平安初期には約750万となった。その後、人口はゆるやかに減少し、鎌倉時代初期には約600万にまで落ち込んだ。鎌倉時代後期になると人口は少し増えて、江戸時代が始まるときには約1200万になった」。

「大陸から日本列島に人びとが渡ってきた過程、そして、日本社会が発展していく過程に、気候変動や環境変動はどのような影響を与えたのであろうか? それを明らかにするために、筆者は環境因子の中で最も重要な、日本列島における『温度』を復元した。・・・長期間の寒冷化などの極端な気候変動が、社会に大きな変化を促すと筆者は考えている」。

「筆者は、気温・環境の変動は、社会を直接に支配するというより、食料や生業、人間社会・経済・文化に作用し、技術革新や移住を介して人間社会に働きかけると考えている」。

こういう視点から歴史を俯瞰すると、これまでとは違った光景が見えてきますね。