榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

読書術の本は多いが、購書術の書は珍しい・・・【情熱的読書人間のないしょ話(42)】

【amazon 『購書術』 カスタマーレビュー 2015年2月2日】 情熱的読書人間のないしょ話(42)

昨年9月まで顧問をしていた企業で、月1回、研修講師を務めています。これまで、「イキイキ・ワクワク仕事術」「逆境脱出術」「スケジュール管理術」「段取り術」を講義し、次回の「情報管理術」の準備に取りかかったところです。このテーマに関し、受講者はどういう悩みを抱えているのか、どういうアドヴァイスができるか、どういう内容をどういう順番で盛り込むかなど、構想や段取りを練るのは、なかなか楽しいものです。散策しながらあれこれ考えていたら、歩数計が11,037歩を指していました。

閑話休題、世に読書術の類いは多いのですが、本を買う方法を指南する書籍には滅多に出会えません。『購書術――本には買い方があった!』(中川右介著、小学館新書)には、本の上手な購入法が記されています。小出版社経営者、編集者、作家としての経験を踏まえて書かれているので、説得力があります。そして、出版業界の興味深い裏話も盛りだくさんです。

「(新刊の本が)『売れた』『売れない』は、発売から数週間で決まってしまう。だから、好きな作家がいて、その人の本をもっと読みたいのであれば、発売されたらすぐに買うことだ。そして初速(発売直後の売れ行き)をよくして、版元にも書店にも『売れている』という実感を抱いてもらう。それが、読者にできる最大にして最良の『作家を育てる方法』だ。作家だけではない。出版社を育てる、あるいは支援するのも同じことだ。自分に合った本を出している出版社があるならば、そして、その版元が小さければ小さいほど、そこが出す本は発売直後に買うようにしてあげたい。発売直後に買う1冊は、発売から3カ月後に買うのよりも、著者や版元にとっては、重みが違うのだ」。本書は、散策の途中で、発売初日に紀伊國屋書店おおたかの森店で購入したので、著者に喜んでもらえそうです(笑)。

「知り合いが本を書いて、『読んでください』と送られてきたら、それは著者が出版社から買って送ったものだと理解してほしい。本を出した友人・知人に『ちょうだい』とねだる人がいる。『読みたい』という気持ちで『欲しい』というのだと信じたいが、友達であればなおさら、その人の本を買ってあげてほしい。著者もまた版元から買っているのだということを知ってほしい」。私も時々、著者から本を贈られることがありますが、このことは知りませんでした。

「アマゾンでは『この商品を買った人はこんな商品も買っています』も便利な機能だ。リアル書店の棚も同じジャンル、同じテーマの本はまとめられているが、あくまで見かけでの判断でまとめられている。飛躍がない。しかし、アマゾンのこの機能だと、思わぬ発見がある」。

「作り手から言わせてもらえば、初版は間違いがあるから本としての価値は低い、となる。編集者同士の話題では、『10万部のベストセラーは作れる可能性があるが、1カ所も誤植、誤字、誤りのない本を作るのは不可能だ』とよく言い合う。残念ながら、これが真実である。まず、著者が間違う。次に校正者が見逃す。編集者も気づかない。・・・だから、版を重ねている本ならば、最新(版)のを買うのがいちばんいい」。