榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

蔓性植物の伸びる戦略に学ぶ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(172)】

【amazon 『里山のつる性植物』 カスタマーレビュー 2015年9月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(172)

都心の飯田橋に戦国時代の城があったと聞き、早速、行ってきました。神楽坂の坂上から少し入った所に光照寺という寺があり、その一帯に牛込氏の居城があったそうです。遺構等は何も残っていませんが、境内に佇んでいると、在りし日の城の姿が瞼に浮かんできます。これですから、歴史好きは得ですね。

P1020745

P1020743

閑話休題、『里山のつる性植物――観察の楽しみ』(谷川栄子著、本間秀和写真、NHK出版)は、珍しいコンセプトで出版された本です。蔓性植物の伸びる戦略、その智恵と技に学ぼうというのです。「つる性植物は、他の植物のように太い幹になることよりも細く柔らかなつるになることを選びました。自分だけでは身体をささえることができないので、他のものによりかかり、絡みついてひたすら光を求めて伸び続けています。・・・この本で紹介した(約90種の)つる性植物のほとんどは、私たちのそばで健気に生き続け、暮しに役立ってきた親しみやすいものばかりです」。

蔓性植物の伸びるための手段として、①鶴で巻きつく、②葉柄で巻きつく、③巻きひげで絡む(巻きひげの先端が膨らんだ吸盤状になるケースもある)、④棘や鉤で引っかける、⑤這って伸びる、⑥付着根で貼りつく――の6つが挙げられています。何と多様性に富んだ戦略ではありませんか。

私の好きなアケビ(実を見ると秋を感じる)、ツルウメモドキ(我が家にある)、ヒルガオ、カラスウリ(夜間に咲く白いレースのような花の写真を撮ったが、残念ながら不鮮明だった)、ツタ、ノイバラ(芳香がある)に止まらず、知らなかった多くの蔓性植物が、写真と文章で説明されています。

一番驚いたのは、イシミカワの果実を包んでいる萼が多彩な宝石のように色づいている写真です。