榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

人生の社会人・家庭人期に、老年期に人間力を向上させるための指南書・・・【リーダーのための読書論(60)】

【amazon 『人間力マネジメント』 カスタマーレビュー 2015年9月19日】 リーダーのための読書論(60)

人間力マネジメント――仕事と日常を磨く』(山本藤光著、医薬経済社)の著者は、人生を①生徒・学生期、②社会人・家庭人期、③老年期――の3期に分けて考えている。本書は②と③に焦点を当てているが、老年期にまで目配りされている点に特徴がある。

人間力の必須項目が6つ挙げられている――①ワンランク上の自分を追求する真摯な力。具体的には意欲→夢→目標→努力→失敗→反省→経験→智慧の「人間力サイクル」を回し続ける力、②伴走者あるいは応援者に対して、優しい眼差しで接する力、③社会、仕事、日常に対して知的な取り組みができる力、④仕事を失った老年期の人は、充実したライフワーク、趣味、小さな研究テーマを、コツコツ継続できる力、⑤部下に対して仕事以外にも、ともに向上しようと働きかけられる力、⑥上司に対して、信念を持って改革の提言ができる力。

人と接するとき、4つの心の矢印に配慮せよというアドヴァイスは、いかにも苦労人の著者らしい。「●下向きの矢印=部下など目下の人と接するとき、上から目線になっていないかを気に留めます。●上向きの矢印=上司や顧客と接するとき、へりくだり過ぎていないか、迎合し過ぎていないかを気に留めます。あるいは部下と接するとき、彼の言いたいことをきちんと吸い上げているかを気に留めます、●右と左への横向きの矢印=優れた人と接するとき、自分の意見が相手に伝わっているかを気に留めます。相手の意見をていねいに聞いているかを気に留めます。相手の意見に共感や感謝を示しているかを気に留めます」。

どんなに貧乏でも、私たちには4つの無形財産があるという指摘は、自分の知的資産を棚卸しし、磨きをかけようとする際に役に立つ――①知識資産=この「知識」があるから、仕事も日常もがんばっていられると思う資産、②経験資産=この「経験」があったから、仕事にも日常にも役に立っていると思う資産、③人財資産=この「人」との出会いが、現在活かされていると思う固有名詞。書籍の上の師でも構わない、④技能資産=この「スキル・ノウハウ」があるから、今の仕事や日常に活かせていると思う技能。

リーダーに必要な4つの視点の頭文字から名付けられた「モナリザ」は、著者の工夫の傑作と言える。覚え易いので、多くのリーダーたちに活用されることだろう――●モ=部下に向けて「モチベーションは髙いか」、●ナ=チームに向けて「ナレッジは循環しているか」、●リ=自分自身に向けて「リーダーシップを発揮しているか」、●ザ=人間力に向けて「定冠詞Theがつくような輝かしい仕事と日常を展開しているか」。

人間力を向上させるためのエッセンスが凝縮した一冊である。