恋愛の本質を衝くアンソロジー・・・【情熱的読書人間のないしょ話(419)】
散策中、帽子に何か昆虫が飛んできたと思ったら、ヤブキリでした。ヤブキリとウマオイはよく似ていますが、頭部の茶色部分が目まで達しているのがウマオイ、達していないのがヤブキリです。ヒカゲチョウは一見地味ですが、よく見るとなかなかお洒落です。サツマイモの畑が広がっています。ヒマワリには白い雲が似合います。因みに、本日の歩数は13,806でした。
閑話休題、『恋愛詩集』(小池昌代編著、NHK出版新書)には、詩人・小池昌代好みの国内外の恋愛詩43篇が収められています。
「恋愛の基本形は、人が人を恋うこと。そしてその源には、ざわめく肉の欲がある。平成時代のわたしたちは、おおらかで丸太のような性欲を、まだ持っているといえるだろうか」。
大手拓次の「夜の脣(くちびる)」は、恋人の唇が詠われています。「こひびとよ、おまへの 夜のくちびるを化粧しないでください、その やはらかいぬれたくちびるに なんにもつけないでください、その あまいくちびるで なんにも言はないでください、ものしづかに とぢてゐてください」。若い女性の濡れた唇が夜の闇に浮かび上がってきます。
伊藤比呂美の「とてもたのしいこと」は、愛する人との交合が生々しく表現されています。「あたしの襞をかよって 子宮にまでおよんでってしまう (ひろみ、(尻を出せ、(おまえの尻、と言ったことばに自分から反応して わ。・・・(すきか? 声も搾られる (すきか? きつく問い糺すのだ、いつもそうするのだ (すきか? すきか? すき って言うと おしっこを洩らしたように あ 暖まってしまった」。何とも直截的で官能的な詩ですね。
茨木のり子の「夢」は、最愛の夫が亡くなって四十九日の前夜、「あなた」が「わたくし」の肉体に刻印を残していったことを書きとどめています。「ふわりとした重み からだのあちらこちらに 刻されるあなたのしるし ゆっくりと 新婚の日々よりも焦らずに おだやかに 執拗に わたくしの全身を浸してくる この世ならぬ充足感 のびのびとからだをひらいて 受け入れて じぶんの声にふと目覚める」。死さえも、愛で結ばれた二人を分かつことはできないのです。
恋愛の本質を衝くアンソロジーです。