複数の問題を一気に解決するアイデアを生み出すことは可能か・・・【あなたの人生が最高に輝く時(67)】
インクルージョン思考
『インクルージョン思考――複数の問題を一気に解決する』(石田章洋著、大和書房)では、アイデアを生むためのユニークな方法論が展開されている。インクルージョン思考とは何か。著者は、「複数の問題を一気に解決する、インクルーシブ(包括的)なアイデアを生むための思考法」と定義している。
4つのステップ
インクルーシブなアイデアを生み出すためのステップは、①高次の目的を決めて旅立つ、②目的に従って材料を集める、③異なる分野の材料をつなげる、④手放して「ひらめき」とともに帰ってくる――の4つである。
第1段階
「高次の目的を決めて旅立つ」に当たり、「社会によい影響を与える」、「誰かを助ける」、「誰かを笑顔にする」、「誰かと誰かを結びつける」、「誰かに自信や安心感を与える」といったような、利他的でポジティブな目的を、できるだけ具体的に設定するよう勧めている。
さらに、「決められた締め切りがなかったとしても、自分で締め切りを設定して、その期間内にアイデアを生み出すことを、自分自身にコミットするのです」、「スケジュールを決めて毎日、強制的にでもデスクに向かうことで、最終的にアイデアは降りてくるのです」――と補足している。
第2段階
「目的に従って材料を集める」ときは、「目的」をリサーチのあいだも明確に意識し続けるようアドバイスしている。効率よく情報を集めるために大切なことだというのだ。
「普段、目にしていながら気づかなかったものも、意識していればスルーしないのです」、「ネット上のブログやSNSには、インクルーシブなアイデアを生み出すうえで重要なファクターとなる、エンドユーザーの生の声や本音もあふれています」、「嗅覚や触覚、味覚といった情報は、潜在意識を刺激して、インクルーシブなアイデアの種になることが多いので、極めて価値の高い情報となります」、「あなたが、これまでの人生で『おもしろいと感じたこと』や『衝撃を受けたこと』、『感動したこと』や『興味を持ったこと』など、潜在意識のなかで眠っている材料が、リサーチで集めた材料と組み合わさって、新しいアイデアは生まれます」――と説明されている。
この段階では、集めた情報を整理してはいけない、自らの判断はいったん「留保」して掘り下げよ――と強調している。
第3段階
「異なる分野の材料をつなげる」に関して、「物事の関連性を見つけ出す才能」とは、「あまり関係性がないと思われていたことに意外な共通点を見出す才能」だと断言している。
異質なアイデア同士の結び方が実例で示されている。マジックテープのアイデアを生み出したメストラルの頭の中はこんなふうだったろうと想像している。「具体例=オナモミ(植物)」→「ざっくり一般化=くっついて、はがせる」→「具体化=マジックテープ」という思考プロセスが展開されたというのだ。
第4段階
「手放して『ひらめき』とともに帰ってくる」の、熟成前のアイデアはいったん手放そうという提言は、本書で最もユニークなものと言えるだろう。
例証として、興味深いことに井上陽水の歌「夢の中へ」が引かれている。「私には、この歌がまさに、インクルーシブなアイデア発想のための鍵を歌っているように思えます。歌の主人公の女性は、『カバンの中も机の中も探したけれど』探し物は見つかりません。そんな彼女に、陽水さんはこう言います。『探すのを止めたとき、見つかることもよくある話で、踊りましょう、夢の中へ行ってみたいと思いませんか?』。あなたも探すのをやめて、いったん手放したうえで、ぐっすりと眠り、リラックスしながら、『夢の中』でダンスでもしてみましょう。インクルーシブなアイデアは、必死に探すのをやめて、手放したときに見つかるものなのです」。因みに、「夢の中へ」は私の大好きな歌で、折に触れてCDで聴いているので、この引用は嬉しい。
「科学者、作家、芸術家の多くが、異口同音に『手放す』ことで、アイデアがひらめいたと言います」。いったん手放すから、無意識の材料と結びつくというのだ。
7つの習慣
インクルージョン思考を磨く7つの習慣が、列挙されている。①好奇心を持ち続けてストックを増やす、②必ず「日付の入った」メモを取ろう、③インプットは雑食系を心がける、④デスク周りは「綺麗に」散らかそう、⑤ぼーっとする時間を「意識的に」つくる、⑥毎日、誰かを笑顔にしよう!、⑦自らを世界の一部だと考える。私の体験に照らして、①、②、③が特に重要だと考えている。