イラストで認知科学の基本が学べる一冊・・・【MRのための読書論(184)】
認知科学
認知科学の基本を学ぶのに恰好な書がある。『イラストで学ぶ認知科学』(北原義典著、講談社)は、認知科学概論、感覚、知覚・認知、記憶、注意、知識、問題解決、意思決定、創造、言語理解、情動、社会的認知、コミュニケーション、錯覚、脳――のそれぞれについて、イラストと簡にして要を得た文章で解説されている。
推論
前提としての情報から結論を導出するプロセスを推論といい、演繹推論、帰納推論、仮説推論などがある。演繹推論は、1つ以上の前提情報から、論理的に結論を導出する手法である。帰納推論は、個別の事例から普遍的結論を導出する手法である。仮説推論は、前提情報に加え、その前提の解釈可能な仮説も用いて結論を導出する推論であり、科学における実験や観察に基づき仮説を検証する手法に通じる。
洞察
問題解決場面において、ひらめく、すなわち悲連続的な発案行動を洞察という。アメリカの心理学者ウォーラスは、人間が創造的解に到達するプロセスには、以下の4段階があると述べている。準備→あたため→ひらめき→検証。試行錯誤はPDCAのサイクルだが、そのプロセスも洞察に繋がる。
アナロジーを用いた発想
各概念および関係性を対応づける譬えは、アナロジー(類推)と呼ばれる。アナロジーを用いると、経験したことのない新しい問題について、これまでの延長ではない異なる視点から眺めることができ、非連続的に解決の糸口が見つかることがある。アナロジーでは、取り上げる問題・状況をターゲット、譬えられる類似した過去の知識・経験をソース、対応づけを写像と呼ぶ。アナロジーを用いた問題解決では、①ターゲットに類似したソースを長期記憶領域から検索する、②ソースからターゲットへの特徴の写像を行う、③写像の状況からターゲットに対する解を生成する――という過程を経る。
発想支援手法
発想支援手法の一つであるTRIZは、独創的問題解決理論というロシア語の頭文字を並べたもので、旧ソ連の技術者アルトシューラーが考案した技術問題解決支援手法である。アルトシューラーは、技術者が発明に辿り着くアプローチの本質を追究し、以下の結論を得た。①問題に直面したときには、過去の成功体験を参照し解決しようとする、②過去の成功体験が使えないときには、試行錯誤に向かう、③ある点を改善しようとすると別の点が悪化するという技術的矛盾をうまく両立させ、解決することが成功に繋がる、④技術的矛盾を解決するには、定石がよりどころになる。分割原理=いくつかに分割する、分離原理=空間的もしくは時間的に分けてみる、局所性原理=一部を変えて実行する、組み合わせ原理=組み合わせてみる――など、アルトシューラーの「解決のための40の原理」は、アイディアを引き出すのに非常に役に立つ。
社会的推論
社会的状況における人間の推論を社会的推論という。社会的推論に影響を与える要因には、ステレオタイプ、確証バイアスなどがある。ステレオタイプは、あるカテゴリーに対する固定的なイメージをいう。ステレオタイプは、認知をゆがめたりするなど、人の印象形成に少なからぬ影響を及ぼす。ステレオタイプは、一般的に偏見に繋がるようなネガティブなニュアンスを伴うことも多い。また、私たちは期待を持つ仮説について、都合のいいデータを集め、その反例を見出すよりも確証をさらに上げようとしがちである。これが確証バイアスである。
情動と脳
情動は、入力された刺激に対する評価、反応、行動のプロセスといえる。大脳辺縁系は、感覚受容器から感覚野を通ってきた情報を受け取り、評価を行う。快という情動に関わる回路は報酬系、不快に関わる回路は嫌悪系と呼ばれている。評価プロセスでは、側坐核や偏桃体が重要な役割を果たし、報酬、嫌悪に関しての判断を行う。情動に関する評価を受けた後、その結果に対する身体反応や行動喚起に関与するのは、脳幹や視床下部である。
戻る | 「MRのための読書論」一覧 | トップページ