榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

アルコールは違法薬物よりも質(たち)が悪い・・・【MRのための読書論(182)】

【ミクスOnline 2021年2月15日号】 MRのための読書論(182)

禁酒の勧め

そろそろ、お酒やめようかな――と思ったときに読む本』(垣渕洋一著、青春出版社)は、長年、アルコール依存症の治療に当たってきた精神科医の禁酒の勧めであるが、驚くべきことが書かれている。

違法薬物より強い依存性

その第1は、アルコールは覚醒剤や麻薬よりも質(たち)が悪いという警告である。

アルコールは「脳と体への影響を考えるとれっきとした『薬物』です」。

「アルコールの依存性の高さは違法薬物をもしのぐほど」。アルコールは「合法の薬」なので、アンフェタミン(覚醒剤)やコカインなどの「違法の薬」と比べて安全で有害性も低いと思われがちだが、それは誤った思い込みだというのである。アルコールのほうが依存性が強いことが科学的に証明されているからだ。

あなたもアルコール依存症?

その第2は、晩酌がやめられないのは既にアルコール依存症予備軍だという託宣である。

「ごく普通のビジネスパーソンにもアルコール依存症の方は大勢いらっしゃいます」。現在、国内のアルコール依存症の患者数は約100万人、その手前の予備軍まで入れた数は全国で1000万人以上だと言われている。

「『毎日飲む人』は立派な依存症予備軍」。「朝起きたときに飲みたくなったら赤信号」。「晩酌しないと、一日が終わった気がしない」は、要注意。

「平均飲酒量が増加すると急激に肝硬変のリスクも高まることがわかっています。一つの臓器が病めば、悪影響は全身に広がり、気がつけば体は『病気のデパート』です」。

「『ストロング系飲料』は依存症への近道」。

「飲酒問題は加齢と共に深刻化する」。

若者のアルコール離れ

その第3は、若い世代のアルコール離れが50%に達しているという驚愕の事実である。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告(平成30年)」では、今の日本では55.6%の人に「飲酒習慣がない」となっている。このうち、「飲まない(飲めない)」が38.0%、「ほとんど飲まない」が15.8%、「やめた」が1.8%で、アルコールを飲む人のほうがマイノリティ、つまり少数派になりつつあることが分かる。

「アメリカの若者の間では『酒を飲まないこと』がムーブメントになりつつあり、『ソーバーキュリアス(Sober Curious、シラフでいたがる人)』という動きが見られます。・・・シラフでも人生を謳歌していることをSNS上でアピールする人、ノンアルコール・カクテルしか提供しないバーの誕生――。こうした動きが顕著です。ソーバーキュリアスは、2000年以降に成人、社会人になった『ミレニアル世代』といわれる若者層を中心に広がりを見せています。このころに生まれた若者ならではの考え方や価値観から、『あえて飲まない』という動きが広がっているのです。・・・日本の若者の場合、調査データによると4分の1程度の人にソーバーキュリアスの傾向があり、若者のおよそ半数は日ごろほとんどアルコールを口にしません」。

「WHOも警鐘『アルコールは健康障害の最大リスク』」。WHOは、煙草の害を減らすための世界戦略を推進し、ある程度の成功を収めたため、「さあ、次はアルコール対策だ」と張り切っているというのである。日本でも多くの人が禁煙に成功し、「煙草を吸うことのメリットはゼロ」という常識が定着しつつある。

著者は、禁煙の次は、禁酒が世界的に次世代の常識になると予測しているのだ。

禁酒のメリット

禁酒すると、人生が一変すると、著者が7つのメリットを挙げている。
①ぐっすり眠れるようになる。
②夕食の量と体重が減る。
③肌の調子がよくなる。
④出費が抑えられる。
⑤生活習慣病やがんのリスクが低くなる。
⑥思考がクリアになる。
⑦時間にゆとりができる。

上記を踏まえて、著者は、「お酒のない人生を選び取ろう」と呼びかけている。そして、その具体的なアルコールからの脱出法が懇切丁寧に記されている。

私事ながら、私は、目下、禁酒に挑戦中である。本書を読んでも、禁酒を決意できない人には、悲惨な末路が待っていることだろう。