榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日露戦争の勝利はユダヤ人のおかげという知られざる歴史的事実・・・【情熱的読書人間のないしょ話(530)】

【amazon 『慨世の遠吠え』 カスタマーレビュー 2016年9月16日】 情熱的読書人間のないしょ話(530)

中垣克久作の「充」と題されたブロンズ像は、若い生命力を感じさせます。竹林の奥は、昼間なのに真っ暗です。因みに、本日の歩数は10,073でした。

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閑話休題、『慨世の遠吠え――強い国になりたい症候群』(内田樹・鈴木邦男著、鹿砦社)は、自説をはっきりと表明する二人の論客、内田樹と鈴木邦男の対談集ですから、面白くないはずがありません。

鈴木は、こう述べています。「(自民党は)『次は憲法改正だ!』と意気込んでいる。右翼・保守陣営は狂喜している。左翼・リベラル陣営は落胆している。僕は右翼運動を40年もやってきた。アメリカに押し付けられた憲法は見直し、改正すべきだと思っている。ただ、いまの排外主義的右派ブームのなかで、また、熱狂的な興奮状態のなかで、憲法改正するのは危険だと思うし、反対だ。憲法をいじらなくても集団的自衛権を認めた。特定秘密保護法(2013年12月成立)も出来た。『この流れしかない』『この流れに反対する人間は反日だ。国賊だ』と言われる。そのなかで憲法を改正したら、強力な国防軍が出来る。『核を持て!』『徴兵制を!』という声も上がり、どんどん自由がなくなる。集会・結社・表現の自由も制限される。また、自主憲法と言いながら、さらにアメリカ寄りの憲法になり、アメリカの後についていく国になる。だから僕は言った。『自由のない自主憲法よりは、自由のある押し付け憲法を』と。右翼の人たちからは徹底的に叩かれた。しかし、憲法があって人間があるのではない。人間が主だ。人間がいて、いかに自由で平和な生活を送れるか。そのために国家や憲法があるのだ」。私は右翼でも左翼でもないが、鈴木の「自由が大事、人間が主」という主張には大賛成です。

内田は、こう語っています。「集団的自衛権というのは、要するにアメリカの海外派兵に自衛隊がついていって、その『下働き』をするということでしかありません。アメリカ兵の身代わりに自衛隊員が前線に立ち、『敵』の標的になる。それによってアメリカ兵士の戦傷者は減る。民間警備会社の傭兵たちに高い金を払ってやってもらっていた警備や検閲の仕事も、自衛隊がただで請け負ってくれる。アメリカとしたら『いいことづくめ』の話です。でも、それによって日本の国益が増大するということはない。自衛隊員の死傷者が出て、『敵地』で人を殺し、町を焼けば『日本は敵だ』ということになる。そうなれば日本人のツーリストやビジネスマンが拉致されたり、殺されたりするかもしれない。日本国内で市民が無差別テロの対象になるかもしれない。対テロの社会的コストはいまはアメリカやヨーロッパに比べると、ほとんどないに等しいものだけれど、テロ予告があれば、膨大な国家予算をそのために注ぎ込まなければならない。どう考えても、アメリカの海外派兵についてゆけば、日本は巨大なリスクとコストを引き受けることになる。日本の国益は大きく損なわれる。なぜ国益を損なうような政策を政府が推進するのか」。この「自衛隊の海外派兵は日本のリスクとコストを大きく増大させ、国益を損なう」という冷静な戦略論は説得力があります。

日露戦争で日本がロシアに勝てた裏には、ユダヤ人の支援があったという内田の話には、のけ反るほど驚きました。「石原莞爾が満州国にユダヤ人を受け入れて、世界のユダヤ人ネットワークを利用しようとしたのは本当の話らしいですね。その前に、日露戦争(1904~05年)のころ、ジェイコブ・シフ(1847~1920年)というアメリカのユダヤ金融の総帥だった人物がいて、彼がロシア帝国におけるユダヤ人同胞への迫害(ポグロム)を許しがたいと思って、ニコライ二世に民族的鉄槌を下すべく、日露戦争の日本の戦費を調達するということがあったんです。日本の戦時国債を引き受けただけでなく、ロシア国債を買うなと全世界のユダヤ金融関係者に指示を出した。そのおかげで、国際的な金融市場での軍費調達競争では日本がロシアに圧勝した。世界のユダヤ人が結束して、資金的に日露戦争の時は日本を支援した。その貢献に対して、シㇷは戦後来日して、明治天皇から勲一等旭日大授章を授与されている。ユダヤ人の世界的なネットワークの支援によって日本はロシアに勝ったわけだけれども、この事実は当然ながら日本国内ではまったくアナウンスされなかった。勲章はあげたけれども、国際的なユダヤ人資本家たちのおかげで戦争に勝ちましたという事実は、戦争指導部の一部にしか知られていなかったトップシークレットだったんです」。

「でも、それが敵詩的事実なわけですから、政権中枢や皇室周辺から『ロシアに勝てたのは実はユダヤ人のおかげだった』という話がぽろぽろと漏洩してくる。それがじわじわと1930年代まで軍部のなかに拡がっていたんだと思います。石原莞爾は軍の中枢にいましたから、軍の上層部からの『日露戦争に勝ったのはユダヤ人のおかげだ』という機密は申し送られてきていた。だから、日米戦争をするなら、どんなことがあっても世界のユダヤ人ネットワークを敵に回してはいけないという判断をしていたでしょうね」。