榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ガラス、冷たさ、音、清潔、時間、光の発見・発明が世界を変えた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(566)】

【amazon 『世界をつくった6つの革命の物語』 カスタマーレビュー 2016年10月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(566)

散策中に、ハクセキレイの幼鳥をカメラに収めることができました。成鳥とは異なり、薄い青みを帯びた灰色なので、同じ鳥とは思えないほどです。ハチの名前が分からなかったので、今回も千葉県立博物館の宮野伸也氏に問い合わせた結果、大きいほうはハラナガツチバチの1種の雄、小さいほうはセイヨウミツバチと分かりました。クルマバッタモドキが飛び回っています。因みに、本日の歩数は10,715でした。

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閑話休題、『世界をつくった6つの革命の物語――新・人類進化史』(スティーブン・ジョンソン著、大田直子訳、朝日新聞出版)は、えっ、こんな世界史ありなのと思わせる、何ともユニークな著作です。

世界をつくった革命という切り口から、ガラス、冷たさ、音、清潔、時間、光という6つの発見・発明に的を絞っているのですが、それぞれの影響が大きく広がっていくことに驚かされます。

「ヨハネス・グーテンベルクの印刷機は、眼鏡需要の急増を引き起こした。読書という新しい習慣のせいで、大陸中のヨーロッパ人が突然、自分は遠視だったと気づいたからである。眼鏡の市場需要に刺激されて、レンズを生産したり、レンズを使って実験したりする人の数が増え、それが顕微鏡の発明につながり、それからまもなく私たちは、自分の体がごく小さな細胞でできていることを知ることができた。私たちの視界が細胞レベルにまで広がったことと、印刷技術が関係あるとは思えないだろう。・・・グーテンベルクとレンズの話のように、新しいイノベーションによって人が生まれつき持っているツールに障害や弱点が生じ、そのせいで人々は新たな方向へと向かい、本来は発明の一種だった『問題』を解決するために、新たな道具を生み出すこともある。人間の発展をさまたげる自然の障壁や制限を、新しい道具が解消することもある」。

ガラスの物語は、これだけではありません。●紀元前8000年に、旅人がリビア砂漠で大きなガラスのかけらにつまずく、●96~180年に、ガラス職人が丈夫で透明なガラスの製造方法を発見、●12世紀に、世界初の眼鏡「目のための円盤」ができる、●1301年頃に、イタリアの職人が「クリスタッロ(現代のガラス)」の製造に成功、●1400年頃に、ガラス職人が鏡をつくり、自画像が描かれるようになる、●1440年代に、グーテンベルクが印刷機を発明し、識字能力が上がり、眼鏡の市場が広がる――とグーテンベルク以前にこれだけの発見・発明があったのです。

その後も、物語は続きます。●1590年に、オランダの眼鏡職人・ヤンセン親子が顕微鏡を発明、●1608年に、望遠鏡が発明される、●1610年に、ガリレオが望遠鏡での観測により地動説を唱える、●19世紀に、カメラ用レンズの発展。世界初の映画用カメラがつくられる、●20世紀初頭に、ガラス繊維をより合わせたグラスファイバーがつくられる、●1940年代以降に、テレビ映像がつくられる、●1970年に、光ファイバーができる、●1991年に、グラスファイバーを使ったワールド・ワイド・ウェブ(www)がサービス開始、●現在は、スマートフォンで写真を撮影、SNSにアップ、配信という工程すべてがガラスに支えられている――と多岐多様に亘っています。

「ガラスを使うと、光を正確に曲げることによって世界の見え方を変えることができるのだ。このことはたんなる透明性より、さらに革命的であることが判明した」。

「(テレビや映画の発展といった)このような変化は、さまざまなイノベーションと素材から生じたものだが、そのすべてがなんらかのかたちで、光を伝えたり操ったりするガラス特有の能力に依存している」。

「この驚くほど用途の多い物質の物語に、またひとつ意外な展開が加わることを示唆した。すなわち、ガラスがその強さのために利用されるのだ」。グラスファイバーと呼ばれる奇跡の新素材の誕生です。

「デジタルコンピューターを携帯装置にした小型化技術、インターネットとウェブの構築、ソーシャル・ネットワーク用ソフトのインターフェース。私たちがほとんど意識していないのは、このネットワーク全体をガラスが支えていることである」。

「ガラスのレンズのおかげで、私たちの視界が天体や微小な細胞まで広がりつつあったちょうどそのころ、ガラスの鏡のおかげで、私たちは初めて自分自身を見られるようになっていた。それによって、望遠鏡が引き起こした宇宙における地球の位置の再配列より、もっととらえがたいが同じくらい革新的な、社会の再配列が引き起こされた。・・・ヨーロッパ人の意識に新たに自分を中心にすえるという根本的な転換が起こり、さざ波のように世界中に広がることになる(そしていまだに広がっている)」。

「ガラスは小さな装身具や中空の花瓶として始まった。それから数千年を経て、マウナケアの山頂で雲の上に設置されたガラスは、タイムマシンになっている」。

「私たちはいま、炭素を(プラスチックという20世紀を決定づける化合物のかたちにして)ガラスの仕事ができる丈夫な透明素材に変えられるが、その専門技術は生まれてから100年もたっていない」。

従来とは異なる視点で世界史を辿る面白さを、本書が教えてくれました。