榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

熟語の重要性を強調した『熟語本位英和中辞典』を著した斎藤秀三郎・・・【情熱的読書人間のないしょ話(643)】

【amazon 『斎藤さんの英和中辞典』 カスタマーレビュー 2017年1月12日】 情熱的読書人間のないしょ話(643)

小学2年生32名への読み聞かせヴォランティアで、『おじいちゃんの ごくらく ごくらく』を読みました。満月間近の月が木々と隠れん坊をしています。因みに、本日の歩数は10,631でした。

IMG_7124

IMG_7084

IMG_7154

閑話休題、亡き父が、「誠、英語は熟語を物にすると各段に上達するぞ」と言いながら譲ってくれたのが、使い込まれた『熟語本位英和中辞典(新増補版)』(斎藤秀三郎著、豊田実増補、岩波書店)でした。

その『熟語本位英和中辞典』を縦横無尽に、かつ本格的に論じた著作が、『斎藤さんの英和中辞典――響きあう日本語と英語を求めて』(八木克正著、岩波書店)です。

「各種の文献を参考にしながら、英語の表現を収集し、それに対応する、直訳でない日本語らしい表現を対応させる。斎藤のこの作業の集大成が『熟語本位(英和中辞典)』である」。

「単語はばらばらに存在するのではなく、どの語と結合するか、どの語と結合することによってどのような新たな意味が生まれるかを知ることが現代の言語学者の関心であるが、その思想は、すでに100年前に(斎藤秀三郎によって)明確に意識されていた。また、言語の習得または学習においても、個々の単語の意味を知るだけではなく、どの単語がどの別の単語と結合して、どのような新たな意味をもつかを知ることが重要である。そのような基本的言語観、あるいは哲学をもって編まれた英語辞書、それが『熟語本位』である」。

熟語(イディオム、成句、コロケーション、諺)が英語習得で大きな意味を持つ、英語学習には熟語の習得が中心になければならないというのが、斎藤の考え方だったのです。

本書を通じて、斎藤の英語研究と英語教育への貢献度の深さ、広さ、影響力の強さを知ることができました。著者は、当時に、現代の英語教育は斎藤の影響から脱する必要性にも言及しています。

内容はかなりマニアックですが、英語教育に携わる人には学ぶことが多いでしょう。