私ね、エレーヌを見ていると、人間の幸福って、いい家に住むことでも、お金持ちになることでも、立身出世をすることでもなく・・・【ことばのオアシス(40)】
【薬事日報 2010年8月2日号】
ことばのオアシス(40)
私ね、エレーヌを見ていると、人間の幸福って、いい家に住むことでも、お金持ちになることでも、立身出世をすることでもなく、心が満たされることだ、って思えてくるの。エレーヌは、死んだ恋人が、心に生きていて、それで十分に心が満たされているって言うの。
――辻 邦生
私にとって究極の恋愛小説である辻 邦生(くにお)の『雲の宴』(朝日文庫、上・下巻)の一節。
「この世って、心なんだな、と思ったの。すべて心なのよね、この世の幸不幸を決めるのは。物がいくらあったって、心が不満なら、ぜったいに人間て幸福にならないもの」。この作品を読むと、生きるってことは、心を弾ませることなんだな、ということがよく分かる。そして、人生には金や名誉よりも大切なものがあることに気づかせてくれる。
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