榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

宇宙の中の自分を考えるきっかけを与えてくれるエッセイ集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(762)】

【amazon 『宇宙が教える人生の方程式』 カスタマーレビュー 2017年5月24日】 情熱的読書人間のないしょ話(762)

私の敬愛する丸山健二が、『生きることは闘うことだ』の中で、こう語っています。「悩める孤独を癒したいと願うなら近所の里山を散策するといい。そこには和らぎに満ちた命の気配が歌うような抑揚をつけて静かに漂っている。出世の戦いの場における狂奔がいかに愚かしいものであるかをゆったりとしたのどかな雰囲気が悟らせてくれるであろう。そして命のあるべき姿を教えてくれる」。散策中に、ソメイヨシノの赤い実を見つけました。セイヨウザイフリボク(ジューンベリー)が真っ赤な実を付けています。アオキの実が緑から赤に変わりつつあります。ヘビイチゴの赤い実を危うく踏みつけそうになりました。サツキが桃色の花をびっしりと付けています。繁殖力の強いドクダミは、我が家の庭の担当者である女房の好敵手ですが、よく見ると、白い花は清楚です。ヒメウラナミジャノメがやってきました。因みに、本日の歩数は15,234でした。

閑話休題、『宇宙が教える人生の方程式』(佐治晴夫著、幻冬舎)は、理論宇宙物理学者・佐治晴夫のエッセイ集です。

●人間は宇宙のひとかけら。この一瞬が最善の時間(とき)。人生には適齢期などありません。いつでも、スタートの時が適齢期なのです。
●人間関係は目には見えない時空のひずみによって作られる。その人が醸し出す「力の場」が、相手の心に作用する。
●考えることは「ゆらぐ」こと。自然も人間もゆらぎながら進化する。迷いながら生きるのが人生。迷い、ゆらいでも、希望さえ見失わなければ大丈夫。
●ともに食べ、分かち合う能力の獲得こそが、動物から人間への進化の鍵になった。「いただきます」と「ごちそうさま」は平和への合言葉。
●実感できない相手の痛みも、想像することはできる。痛さを経験した人は、相手の痛みにも敏感になれる。「私とあなた」の関係を、「あなたと私」にひっくり返すことが平和への第一歩。
●脳の奥には太古からの記憶が刻み込まれている。星のかけらから生まれた私たちは、やがて小さな粒子となって地球に戻り、いつかは霧となって宇宙に戻る。
●異質なものが調和した時、進歩が生まれる。自己本位な姿勢と他者への攻撃は混乱を招くだけ。互いに認め合い、それぞれの持ち味を生かした協力から平和が生まれる。
●ネズミの時間は足早に、ゾウの時間はゆっくりと、固有のテンポで過ぎてゆく。時計で計れる時間は絶対ではない。生きるとは、「今」を生ききること。
●大事なものは目に見えない。心で見る。自分を深く見つめることが、ひいては、他者に対して闇を照らす灯りのような存在になる。
●自分では自分の顔さえ見ることができない。鏡に自分を映しても、そこにあるのは左右逆転した姿。それなのに、「自分のことは自分が一番よくわかっている」と思い込み、周囲の声に耳を閉ざしていないか?

死について、こう綴っています。「人は、例外なく死を経験します。しかし、自分の死を自らの目で見ることはできません。それは、自分で自分の顔を見ることができない状況に似ています。つまり、他者の死に立ち会うことは、それを通して、自分の死を想い、言い換えれば死の側から生の意味を問いかけることでもあります。『メメント・モリ』です。ラテン語で『死を想え』という意味です」。

愛について、こう語っています。「フランスの作家、サン・テグジュペリがいうように、愛するとは、互いに相手と見つめ合うことではなく、同じ目標に向かって(ゆらぎながら)進んでいく営みだともいえそうです」。

宇宙の中の自分を考えるきっかけを与えてくれる一冊です。