榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

古事記のプロデューサーは藤原不比等だという説を信じられますか・・・【山椒読書論(104)】

【amazon 『神々の流竄』 『梅原猛著作集(8) 神々の流竄』 カスタマーレビュー 2012年11月20日】 山椒読書論(104)

あなたは、学校で古事記の作者は誰だと教わりましたか? 確か、教科書には「天武天皇の命で稗田阿礼(ひえだのあれ)が暗誦していたのを、太安万侶(おおのやすまろ)が筆記した」と、書かれていたと思う。それなのに、『神々の流竄(るざん』(梅原猛著、集英社文庫)の著者は、古事記のプロデューサーは藤原不比等(ふひと)で、稗田阿礼は不比等の偽名だなんて、歴史学者が腰を抜かすようなことを言っている。

不比等といえば、あの大化の改新で活躍し、藤原氏の基礎を築いた藤原鎌足(かまたり)の息子ではないか。その不比等と稗田阿礼が同一人物とは、いったいどういうことだろうか。

この仮説に関しては、さすがの梅原猛もぼろを出すのではないかと、半分は心配しながら、半分は期待しながら読み進んでいくうちに、稗田阿礼は不比等以外ではあり得ないと思い込まされてしまう、これは実に麻薬的な本である。

梅原の『隠された十字架――法隆寺論』、『水底の歌――柿本人麿論』といった著作同様、その力強い構想力に、うっとりとしてしまう。梅原の本はどれも、あたかも上質なミステリのように、謎に挑戦する楽しさを存分に味わわせてくれる。

なお、この説の理解をさらに深めたい向きには、『梅原猛著作集(8) 神々の流竄』(梅原猛著、集英社。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)に収録されている「記紀覚書――稗田阿礼=藤原不比等の可能性」を薦めたい。