榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

君は自由のために戦っているか・・・【山椒読書論(110)】

【amazon 『スペイン戦争』 カスタマーレビュー 2012年11月26日】 山椒読書論(110)

あなたは、イングリッド・バーグマンとゲイリー・クーパーが主演した映画『誰(た)が為に鐘は鳴る』を見たことがありますか? スペイン戦争(スペイン内戦)が背景となっているこの作品は、自ら国際義勇兵としてこの戦争に従軍したアーネスト・ヘミングウェイの原作によるものである。ヘンミングウェイを従軍にまで駆り立てたスペイン戦争とは何か。

スペイン戦争は第二次世界大戦の序曲となった重大事件だが、一言で言えば、フランシスコ・フランコ将軍に代表されるファシズムと、人民戦線に代表される自由主義であった。ファシズムの暴虐の嵐の中で自由の危機を感じた人々が、全世界から国際義勇軍に応募し、スペインの民兵と共に戦った。この中に、ヘンミングウェイが、アンドレ・マルローが、ジョージ・オーウェルがいた。そして、国際義勇軍に参加した只一人の日本人、ジャック・白井がいた。白井はこの戦争の最中、ファシストの銃弾に倒れてしまうのだが。

世の中には、人間として知っておかねばならないこと、いわば人生の必修科目とでもいうべきものがある。スペイン戦争はまさしく、その必修科目の一つなのだ。スペインは遠く、フランコも今や亡い。しかし、スペインの戦場で自由のために命を懸けた人々(この中には女性闘士もいた)の存在は、私たちを勇気づけてくれる。

200ページに満たない小冊子、『スペイン戦争――ファシズムと人民戦線』(斉藤孝著、中公文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、40数年前に書かれたものだが、現在もその輝きを失っていない。私たち日本人がスペイン戦争を知る入門書として、最高のものである。