榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

あまりにも強烈な、あまりにも強烈過ぎる韓国映画・・・【山椒読書論(414)】

【amazon DVD『悪い男』 カスタマーレビュー 2014年2月14日】 山椒読書論(414)

自分とは異なる考え方をし、その行動も自分とはまるきり違う。そんな奴なのに、なぜか惹きつけられてしまう、そういう男に遭遇することがある。私にとって、そういう存在の映画が『悪い男』(DVD『悪い男』<キム・ギドク監督、チョ・ジェヒョン、ソ・ウォン出演、エスビーオー>)である。

娼婦街のチンピラ・ハンギは、偶然見かけた清楚な女子大生・ソナに惹きつけられ、穴が開くほど見詰める。ソナは冷たく睨み返す。突然、無理やりキスをするという行動に出たハンギを、ソナは激しく侮蔑する。

やがて、ハンギは汚い策略を弄して、処女のソナを娼婦街に売り飛ばす。来る日も来る日も客を取らされ、逃げ出さないようにチンピラに監視される日々。

相手を傷つけることでしか愛情を表現できない男と、彼によって人生を狂わされた女。愛と憎悪、執着と絶望が渦巻く中で、思いもかけない結末が訪れる。世の中には、こういう形の愛もあり得るのか。

平凡な生活に倦んだとき、無性にこのDVDが見たくなる。屈折しているのは作中の二人なのか、それとも私のほうなのか。