腰にへばりついた河童に水底へ引きずり込まれていく裸女・・・【情熱的読書人間のないしょ話(806)】
小学2年生対象の読み聞かせヴォランティアで、『きらめく船のあるところ』を読みました。教室の黒板の脇に、「生活目標 雨の日の過ごし方を工夫しよう」という標語が貼られています。我が家に、突然、セグロアシナガバチがやって来ました。せわしく飛び回るアゲハチョウをカメラに収めるのは、一苦労です。あちこちで、ムクゲが薄紫色の花を咲かせています。橙色のヒメヒオウギズイセン、白色のガザニアも頑張っています。因みに、本日の歩数は10,676でした。
閑話休題、『あやしい美人画』(松嶋雅人著、東京美術)は、あやしい美人画が満載です。
橘小夢の「水魔」(昭和7年)の耽美性は、群を抜いています。「藻がゆらめき水泡がきらめく中に、河童に背中からしがみつかれて水底に沈む女。白い柔肌に映える赤味を帯びた頬と画面の『上』へと沈んでいく構図が相まって、死が怖れよりも甘い官能として暗示されているようだ。個展に出品した時、発禁処分を受け販売を禁止された」。目を閉じた裸女の白い肌と、腰にへばりついている河童のくすんだ緑色の鱗の対比があやしい雰囲気を醸し出しています。
甲斐庄楠音の「幻覚」(大正9年頃)の、炎の化身のように舞い踊る女の顔はあやしく彩られています。「憑き物につかれたように狂おしく踊る。目元や指先が赤く染まり、赤い着物も炎のように舞っている。壁の影は心の闇のあらわれか。当時、親しかった丸岡トクという女性を失い、傷つき乱れた心情が反映した作品ともされる」。
上村松園の「焔」(大正7年)は、女の艶めかしさの極致が表現されています。「『源氏物語』に登場する嫉妬に狂う六条御息所の生霊を描く。打掛けには、藤花を狂おしく咲かせ、その花にからむ蜘蛛の巣を描く。女の身体や着物の柄のさまざまな曲線が、嫉妬に翻弄される女の姿を彩る。気品あふれる松園作の中では異色の作品で、ぞっとするほど艶かしい」。
本書の中には、正統派の美人画とは別の世界が広がっています。