幸福の絶頂から奈落の底に落ち込んだ女性の立ち直りへの中間報告書・・・【あなたの人生が最高に輝く時(81)】
中間報告書
『OPTION B――逆境、レジリエンス、そして喜び』(シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著、櫻井祐子訳、日本経済新聞出版社)は、公私に亘り幸福の絶頂にいたfacebookのCOO(最高執行責任者)、シェリル・サンドバーグが愛する夫の急死により奈落の底に落ち込んだものの、アダム・グラントの助けを得て、立ち直りつつあることの中間報告書である。
最愛の夫の急死
「これを書いているいま、メキシコでのあの想像を絶する日から2年近くが経とうとしている。子どもたちが父親を亡くしてから2年。私が生涯の恋人を亡くしてから2年だ」。
「時は刻々と進み、ある面では私も前へ進んでいる。でも進んでいない面もある。悲嘆があるべきところに自然と導かれるのを、私たちは待たなくてはならないのだ。私はこの本を書き、人生の意味を見出そうとしたが、悲しみを追い払うことはできなかった。いまでも悲嘆が波のように襲い、意識のなかに入り込んできて、ほかには何も感じられなくなるときがある」。最愛の人を亡くせば、誰でもこうなるだろう。
オプションB
「でも悲嘆は波のように押し寄せる一方で、潮のように引いていく。そして潮が引いてみると、ただ生き延びただけでなく、ある面では前より強くなっていることに気がつく。たとえオプションB(次善の選択肢)であっても、私たちには選択肢がある。いまも人を愛し・・・そして喜びを見つけることができるのだ。逆境から立ち直るだけでなく、逆境をバネに成鳥することもできるのだと、いまならわかる」。禍を転じて福となすの精神が必要だというのである。
「完璧な人生なんてあり得ない。だからみんな、なんらかのかたちの『オプションB』を選ばざるを得ない」のだ。
喪失と悲嘆
「喪失はどんな人にも降りかかる。仕事を失うこともあれば、愛を失うこと、ときには命が失われることもある。大切なのは、こうしたことが起こるかどうかと考えることではない。喪失は必ず起こり、だれもが向き合わなくてはならない。・・・たとえ人生の濁流にのみ込まれても、水底を蹴って水面に顔を出し、もう一度息をつくことはできるのだと、私は学んだのである」。
「悲嘆はありのままに受け止めなくてはいけないが、どれだけ早く虚空を通り抜けられるか、その過程でどのような人間に成長するかは、自分の信念と行動次第でコントロールできるのである。・・・闇はいつか必ず明けるが、自分でもその後押しをしなくてはいけない。人生最悪の衝撃的な悲劇に見舞われようと、その影響を多少でも自力でコントロールすることはできるのだ」。いつまでも悲嘆に浸り続けていてはいけないということ。
レジリエンス
「悲劇は自分のせいではなく、すべてにおよぶわけではなく、ずっと続くものでもない。しかし、レジリエンス(折れない心)はちがう。私たちは生涯を通して自分の力でレジリエンスを育み、すべてに広げ、永遠にもち続けることができるのだ。・・・私たちはみな、自分のなかに強さを見つけ、ともに力を育んでいけるはずだ。私たち一人ひとりのなかに、けっして消えることのないともしびがあるのだから」。レジリエンスを身に付ければ、強い人間に生まれ変わることができるのだ。