やはり、本は「紙」で読みたい、町の書店で求めたい・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1031)】
ハシブトガラスの黒い羽が青紫色に輝いています。因みに、本日の歩数は10,080でした。
閑話休題、『増補 書店不屈宣言――わたしたちはへこたれない』(田口久美子著、ちくま文庫)は、リアル書店員によるリアル書店讃歌です。
著者は電子書籍拡大の趨勢に疑問を投げかけています。「本はかたちがあってこそ本だ。本は紙とインクでできたモノなのだ。著者にはじまり、さまざまな業態のいろいろな人の手を通して読者に渡るのが本だ。その流れの最後の場所に私たち書店員がいる。それらの『本』をふさわしい居場所に置き、読者に見つけてもらい、手渡しする場として機能したい、と私たちは願っている。そんな思いをかかえながら、毎日の『書店働き』は続く」。
「書店はお客さんが育ててくれる、と私は思っている。というよりお客さんの呼吸をうまく把握できる棚をつくれるかどうか、にかかっている。だから長い年月が必要なのだ」。
「出版の現状は出口がよく見えない。私は書店員だし、小さい頃から本が常に傍らにある世界で生きてきた。だから町に書店があってほしい、と願う。紙の本を知らないで育つと、人は記憶をどうやってとどめるのだろうか。生半可な予想を寄せ付けないほど先が見えない」。
アマゾンに対する著者の警戒心は強烈です。「私たちはこういう大切な『マニア・学問の人』、つまり日常的に本が周辺にあるひと、を新興ネット書店・アマゾンに奪われているわけだ。だが、そのお客さんにとってはまことに便利な時代なったのだろう、書店員として認めるのは悲しいけれど」。
アマゾンの書評にも言及されています。「アマといえば、アマゾンの書評を作家さんたちは結構気にしているみたいで、アマゾンじゃなくても、ブログで書評を書いている読者がたくさんいて、ちょっと前までは考えられないような影響力があるみたいです」。
著者は現状を嘆くだけでなく、町の小規模書店が何とか書籍で食べていく道についても頭を巡らせています。「一つの解答は昨今話題の『セレクト書店』、でも立地(大都市でないと難しい)と経営センスが不可欠。成功している店主は、多分他の業態でも成功する、でもあえて書店を選んでいる。しかもそれまでの書店経営とは違う、つまり自分で本を『セレクト』して並べる、という『優れもの』なのだ。今までの書店は『自分でセレクト』していないの? という疑問にはこう答えるしかありません。はい、今までの書店のかなりが『取次が下支えしている書店』です(かなり、です、全部ではありません)」。
必要に応じて添えられている「文庫版追記」によって、私たちは現状を知ることができます。「4年が経ち、ケータイ小説の売れ行きは減少の一途をたどっている。もともとの『ケータイで小説を読む』ということが、『えっ、そんな時代があったの』と若いコたちが笑いそうな現象にまでなっているらしい。ネット環境は飛ぶように進む」。
読み終わって、やはり、本は「紙」で読みたい、町の書店で求めたい――と、強く感じました。