榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

今夜は、きっと、自分がこの夫になった夢を見て、うなされることでしょう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1059)】

【amazon 『ドレス』 カスタマーレビュー 2018年3月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(1059)

地元の、明治5年創業の窪田酒造を見学しました。その隣の利根運河大師では、大師像がずらりと並んでいます。キタテハとキタキチョウがフキの雄株の花の蜜を吸っています。オオイヌノフグリが群生しています。ハナニラが薄青色、薄紫色の花を咲かせています。ユキヤナギが白い花をびっしりと付けています。ローズマリーが芳香を漂わせています。コブシが咲き始めました。因みに、本日の歩数は13,393でした。

閑話休題、短篇集『ドレス』(藤野可織著、河出書房新社)に収録されている『マイ・ハート・イズ・ユアーズ』を読み終わった途端に、体の微妙な部分がむずむずしてきました。

会社に勤めている「私」は、子どもを産む産まないで同僚たちと話に花を咲かせています。

「帰宅は、夜中になった。・・・私の部屋に灯りが点いていて、そのあたたかな光が目の奥に染みる。あそこに、私の夫がいる。まだわりと小さくてかわいい私の夫が。そして、じきに、私が決断できないでいるうちに、(同僚の男性)佐々木くんみたいにどんどん大きくなってしまう私の夫が。決断してあげなくてはいけない。夫はそれを望んでいる。男だから、それは、本能で。私も、望んでいる。望んでいないことはない、というくらいの望みだけど、望んでいる。でも、私はもう少し今のかたちの、つまり他人のままの夫といっしょにいたかった。ただ、私のそのもう少し、というのが夫にとって致命的なことになるかもしれないっていうのもわかっている、だから」。

「私は夫を抱き上げ、膝に載せた。夫が私の首にやわらかで頼りない腕をまわす。『あ、あ、あのね、あのね、子ども、つくろうか。私たち、子どもつくろうか』。しゃくりあげながら、言う。『こ、今夜』。・・・『そうか、雪乃ちゃん、決断したんだね』。私の肩に顔をうずめて、夫がつぶやいた。しっかりした声だった。ああ、夫も同じ気持ちなのだ」。

私たち夫婦の最後の夜です。

「夫が整えたベッドで、私は夫の愛らしいくちびるにくちづける。耳に、首筋にくちづけながら、夫の服を脱がせる。白い、少年じみた胸があらわれ、私は自分のお腹のあたりが熱くとろけるのがわかった。夫の裸なんて何度も見てるけど、子どもをつくると心に決めて見るのはこれがはじめてで、最後だ。一度きりだ」。

いよいよ、その瞬間が訪れます。「私は仰向けに寝そべり、熱いお腹に、うつぶせにした夫をやさしく置く。たちまち・・・」。この先は、手が震えてパソコンのキーを叩けません。

今夜は、きっと、自分がこの夫になった夢を見て、うなされることでしょう