『鳩の撃退法』を書いた津田伸一こと佐藤正午へのお願い事項・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1129)】
あちこちで、白や赤いタチアオイが咲いています。白や桃色のセイヨウキョウチクトウが満開を迎えようとしています。白と緑のコントラストが目立つシマススキの葉が涼しげです。我が家のアメリカノウゼンカズラが早くも花を付けました。その日のうちに落ちる一日花ですが、これから数カ月に亘って次から次へと咲き続けます。青いガクアジサイとアジサイも頑張っています。因みに、本日の歩数は10,896でした。
話は変わりますが、佐藤正午様、あなたの長篇小説『鳩の撃退法』(佐藤正午著、小学館文庫、上・下巻)には、この2日間、振り回されっ放しでした。これまでのあなたの作品たちにも右往左往させられましたが、今回は、その比ではありませんでした。
何しろ、あなたの分身と思われる元作家の「僕」が深夜のドーナツ・ショップでたまたま相席になり、『ピーター・パンとウェンディ』について語り合った男の一家三人が神隠しに遭ったかのように、忽然と消えてしまうわ、馴染みの古本屋の老店主の形見として届けられたキャリー・バッグの中に、『ピーター・パンとウェンディ』と3冊の絵本と3403万円が詰め込まれているわ、その1万円札が偽札と分かり、裏社会の「本通り裏のあのひと」に怯えることになるわ、高峰秀子という源氏名のデリヘル嬢が店に無断で姿を消してしまうわ、年上の危険な人妻を妊娠させてしまった郵便配達の青年が行方不明になってしまうわ――と、次から次へと謎だらけの竜巻に巻き込まれてしまったのですから。
それだけならまだしも、過去には直木賞を受賞し、10冊も本を出しながら、今は落ちぶれてデリヘル嬢たちの送迎を行うドライバーをやりながら、誰にも読んでもらえる当てのない小説の原稿(それが、この『鳩の撃退法』)を少しずつ書き継いでいく過程の内情暴露的な描写に付き合わされる羽目に追い込まれたのです。
さらに、「女好きのセックスべた」のあなたの見境のない、相手を選ばない手当たり次第の女性漁りの数々、いとも安易に一線を越えてしまう無節操ぶりを延々と見せつけられるというおまけまで付いています。
しかも、最終ページに至って漸く、謎に満ちた各ピースが然るべき場所に収まり、巨大なジグソー・パズルが完成するという凝りに凝ったストーリー・テリングの巧みさには、ひねくれ者の私も脱帽せざるを得ません。
あなたが苦労に苦労を重ねて完成させた『鳩の撃退法』を読み終わるのに、本当に、ほとほと疲れ果てました。このダメージを癒やすには相当の時間が必要と思われます。ですから、次回作を出すのは、暫く後にしていただけませんか。これは私の切なるお願いです。
えっ、何ですって。次回作は既に出版されていて、しかも、直木賞を受賞してしまったですと。もう、あなたには、呆れ果てています。