私の果たせぬ夢、それはツリーハウスだ・・・【山椒読書論(435)】
私の希望は、かなり無理なことでも賛成してくれる女房だが、頑として首を縦に振らないことがある。木の上に小さな家、ツリーハウスを作りたいという、私の少年時代からの夢に対してである。
そういう私を優しく慰めてくれるのが、オール・カラーの写真集『ツリーハウスをつくる』(ピーター・ネルソン著、日本ツリーハウス協会監訳、二見書房)だ。
本書の表紙を飾る「カエデの宮殿」(アメリカ、ワシントン州レッドモンド)が、実に素晴らしい。父が子供たちのために20年かけて作り上げた、カエデの木に鎮座するベニヤ板の宮殿は、眼下の池にそのユニークな姿を映している。
「隠れ家のアトリエ」(アメリカ、ワシントン州フォールシティ)は、教職を退職した注文主の「室内に自然光がいっぱい射し込むように」、「景色を楽しめるように窓も多いほうがいいわ」という希望を見事に叶えている。「夏には茂った葉で覆われてツリーハウスは隠れてしまう」。
「父の家」(アメリカ、ワシントン州スノークアルミー)は、「5本の木に支えられた素朴な空間は、緑豊かな森の斜面にひっそりと」佇んでいる。「彼女の夢の空間は完成した。高さ地上4.2m、広さは10㎡の部屋と、デッキが5㎡。私たちの主義にもれず、ここでも廃材を主な材料とした」。そして注文主と3人の娘たちによる内装もお伽の国のように素敵だ。
「天空の小屋」(アメリカ、カリフォルニア州マリンカントリー)は、「みごとな米マツの枝の上、(15mという)見上げるばかりの高さに浮いている」。高所恐怖症の私が住むのは、少し無理かもしれないなあ。
「スティングの宝物」(イタリア、トスカーニ)は、「地上8mに建てられ、湖面から11mの高さにある。フレームの材料は、嵐で倒れた木を切り出して使用」。「スティングはこのツリーハウスに『大感激した!』という。デッキの手すりが池の上に張り出して、船首のような形をしている」。
裏表紙を飾る夕暮れ時の「樹間の宝石」(アメリカ、オレゴン州ポートランド)は、どの窓からも暖かいオレンジ色の灯りがこぼれ、何とも魅惑的だ。こういうツリーハウスで暮らせたら、どんなに幸せなことだろう。