榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ドナルド・トランプのロシア疑惑の全体像と今後の見通し・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1177)】

amazon 『共謀』 カスタマーレビュー 2018年7月13日】 情熱的読書人間のないしょ話(1177)

モミジアオイが赤い花を咲かせています。グロリオサが赤い花を付けています。あちこちで、さまざまな色合い・形態のムクゲが咲き競っています。夕刻、東京・小伝馬町で開かれた三共時代の仲間の会に出席しました。因みに、本日の歩数は10,127でした。

閑話休題、『共謀――トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』(ルーク・ハーディング著、高取芳彦・米津篤八・井上大剛訳、集英社)によって、ドナルド・J・トランプの「ロシア疑惑」の全体像と解明の進行状況を理解することができました。

2016年6月のクリストファー・スティールの調査報告。「●ロシア政権は少なくとも5年前からトランプを開拓、支援、援助している。これは西側の同盟の分裂・分断を促すことを狙ったもので、(ウラジーミル・)プーチンが承認している。●彼(トランプ)や、彼の側近たちは、民主党内をはじめとする政敵に関するものも含む情報をロシア政府から定期的に受け取っている。●ロシア諜報機関の元トップの話によると、FSB(ロシア連邦保安庁)はトランプのモスクワでの行動を通じて、彼を恐喝できるだけの弱みを握っている。事情に精通した複数の情報源によれば、彼のモスクワでの行動には、FSBによって仕組まれ、監視された性的倒錯行為が含まれる。●ロシアの諜報機関は長年にわたり、ヒラリー・クリントンの弱みとなる情報を収集している。一連の情報の中心は、問題行動ではなく、複数のロシア訪問の際に交わされた会話の盗聴記録や、通話傍受記録である。情報はプーチン直々の指示によりロシア大統領府の(ドミトリー・)ペスコフ報道官が管理している。しかし、それが国外と共有されたことはなく、トランプにも伝わっていない」。

プーチンについて。「プーチンは大きな嘘もつくし(2014年にはクリミア半島に正体を隠してロシア兵を派遣した。リトヴィネンコ暗殺を計画したことも隠した)、小さな嘘もつく。2015年に暗殺された野党指導者、ボリス・ネムツォフは、プーチンは『嘘の専門家』だと言った。ネムツォフに言わせれば、プーチンが人を騙す習性は『病的』だった」。

NSA(アメリカ国家安全保障局)とCIAの長官を歴任したマイケル・ヘイデン大将の言葉。「(ロシアの一連の行動は)歴史上、最も成功した世論誘導工作。成熟した西側の民主主義を手玉に取り、ひっくり返した」。

2016年6月3日10時36分に、ロブ・ゴールドストーンからドナルド・トランプ・ジュニアに送られたメール。「おはよう。エミン(・アガラロフ)から電話があって、実に面白い話があるから君に伝えてくれと言われたよ。今朝、エミンの父親のアラスがロシアの検事総長と会ったところ、トランプ陣営にいくつかの公文書と情報を渡してくれと頼まれたそうだ。それはヒラリーの有罪とロシアとの取引を立証する内容で、君のお父さんにとっては非常に役に立つだろう。あきらかにこれは高度な極秘情報だが、ロシアとその政府のトランプ支援活動の一環だ。この情報をどう扱えばいいだろうか。君がエミンと直接相談することは可能だろうか。私からローナ(・グラフ。トランプの古くからの秘書)を通じて伝えることもできるが、超極秘情報なので、最初に君に伝えておこうと思う」。

「プーチンにとって、これ(ロシアに対する新たな制裁)は大きな誤算だった。ロシア政府がトランプの大統領選勝利を支援した第一の目的は、アメリカによる経済制裁を終わらせることにあったからだ(第二の目的は、以前からアメリカに存在する社会の傷、イデオロギーの傷を引っかきまわすことにあったが、こちらは十分に成功した)。・・・2014年のウクライナ侵攻同様、プーチンによる2016年のアメリカ大統領瀬への干渉は、戦術的には成功したが、戦略的には大失敗だった。ロシア経済に対する制裁の影響は続いており、西欧の低利の融資からいまだ締め出されたままだ。スティールの考えでは、自分の報告がなければ、トランプは制裁を解除し、ロシアと新たな同盟関係を結んでいたに違いないという」。

「(今後もプーチン政権が続くが)それでもいつか、ロシア政府によるトランプ作戦の詳細が漏れ出す可能性がないわけではない。政権交代、亡命者、危険人物――いずれも、深く埋もれた秘密が表に現れるきっかけになる」。

ロシア疑惑は、2つの問題に分けることができます。①大統領選妨害の可能性、②ロシア疑惑捜査に対するトランプ大統領の司法妨害(操作妨害)の疑い――です。

ロシア疑惑の解明ルートは2つあります。①2017年5月に任命されたロバート・モラー特別検察官による捜査、②議会による大統領が有罪か無罪かの審議、および、有罪の場合の弾劾――です。

モラー特別検察官の捜査は着実に進んでいるが、真相解明には時間がかかると、著者は見ています。しかし、議会における急展開の可能性に言及しています。「盤石な支持に支えられているようにみえるトランプ大統領だが、それでもロシア疑惑が今後、急展開していく可能性も捨てきれない。というのも、2018年11月には中間選挙があり、もし、民主党が下院で多数派となった場合、弾劾が一気に進んでいく可能性があるためだ」。