紅葉の季節になると読みたくなるアニメ版の『伊豆の踊子』・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1250)】
ホウセンカが朱色の花をたくさん咲かせています。女房が子供の頃、花弁を揉んで爪に載せ、爪を染める遊びをしていたそうです。赤、紫、白のサルビアが咲き競っています。カラスウリの実が色づいています。因みに、本日の歩数は12,561でした。
閑話休題、紅葉の季節になると無性に読みたくなる一冊があります。アニメ版の『伊豆の踊子』(川端康成原作、椛島義夫キャラクターデザイン、新潮文庫・名作アニメシリーズ)がそれです。
『伊豆の踊子』は、旧制第一高等学校の学生である「私」が、伊豆の一人旅で出会った行きずりの旅芸人一行の可憐な踊子に心惹かれるという物語です。
私が、天城トンネルを通り抜けた所で漸く踊子たちに追いつくシーンは、辺り一面の真っ赤に染まった紅葉が目に飛び込んできます。小説には紅葉のことは書かれていないだけに、このアニメ版が私の宝物となっているのです。
「仄暗い湯殿の奥から、とつぜん裸の女が走り出してきたかと思うと、脱衣場の突鼻に川岸へ飛びおりそうな恰好で立ち、両手をいっぱいにのばして何か叫んでいる。手拭もない真っ裸だ。それが踊子だった。若桐のように足のよくのびた白い裸身を眺めて、私は心に清水を感じ、ほうっと深い息をはいてから、ことこと笑った。子供なんだ。私たちを見つけた喜びで真っ裸のまま日の光の中に飛び出し、爪先きで背いっぱいにのび上がるほどに子供なんだ。私はほがらかな喜びでことことと笑い続けた。頭が拭われたように澄んできた。微笑がいつまでもとまらなかった。踊子の髪が豊か過ぎるので、十七八に見えていたのだ。そのうえ娘ざかりのように装わせてあるので、私はとんでもない思い違いをしていたのだ」。このシーンも、紅葉をうまくあしらって、臨場感豊かに描かれています。なお、小説で、踊子は14歳であることが明らかにされています。
このアニメ版は、書斎の書棚の小説『伊豆の踊子』(川端康成著、新潮文庫)の隣にちょこんと収まっています。