今や売れっ子の44歳の女性漫画家と、61歳の落ちぶれた元・敏腕編集者が20年ぶりに再会した・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1467)】
女房がそっと指差した梢で高く囀るウグイスの雄を、じっくりとカメラに収めることができました。囀りに惹かれて雌が近くの枝にやってきたが、撮影に失敗。ハンカチノキが、花を包む白いハンカチのような苞葉をたくさん付けています。因みに、本日の歩数は10,234でした。
閑話休題、コミックス『黄昏流星群(59)――見上げればそこは星空』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「見上げればそこは星空」は、漫画家としての才能には恵まれているものの。決して美人とは言えない女性が主人公です。
苦労の末に売れっ子漫画家になった44歳の郷原信夫(のぶお)こと犬飼忍(しのぶ)の素顔は、ごく一部の人間しか知りません。男性のペンネイムを用いて、世間には女性であることを秘しているのです。
漫画家の道を志した18歳の時から今日まで恋らしい恋をしたことのない忍だが、たった一度だけ、24歳の時に好きになった17歳年上の男性がいたのです。
その思いを密かに胸に抱き続けてきた忍は、かつては敏腕編集者であった余(あまり)浩司が今では落ちぶれていることを知り、自分の次回作の原作者として余を起用することを担当編集者に無理矢理承諾させます。
忍の担当編集者を介して仕事を依頼された余は、その漫画家が忍とは知らずに、張り切って原作の原稿に取り組むのだが、自分の才能のなさを思い知らされることになります。
そんな折、郷原信夫から電話が入り、昔、よく行っていた鰻屋に呼び出されます。そこで、信夫は、20年前、余に原稿指導をしてもらったり、鰻重を奢ってもらったりした忍であることを余に打ち明けます。事実を知った余は、忍に馬鹿にされたと誤解し、怒りを爆発させます。
「私は人生一度だけの恋でいい! 最初で最後の男が 余さん、あなたなの!」。「そんな一途な恋って、少女マンガの世界にもないぞ」。
思いがけないフィナーレが待ち構えています。
才能を開花させるとはどういうことか、成功するとはどういうことか、人を愛し続けるとはどういうことか――を考えさせられる作品です。